記者余話)奈良県水道一体化 開示請求で「ない」と回答の文書存在 1行の記述の重み
ポリエチレンスリーブに関する記述があった県域水道一体化協議の2023年6月の会議録(下線は「奈良の声」が付けた)=2024年10月5日、浅野詠子撮影
水道管の強靱(きょうじん)化に役立つとして評価が高まるポリエチレンスリーブ(管路外面の腐食予防施工)。2025年4月予定の奈良県域水道一体化事業統合の協議で、この施工法についてどのような検討が行われているのか、記者が県情報公開条例に基づき昨年2023年9月、開示請求したところ、「文書はない」と口頭で回答があったことから請求を取り下げた。
しかし、後にわずか1行の記述ではあるが、記者は関係文書を見つけた。別の開示請求で入手していた水道一体化協議の施設整備作業部会の会議録の中にあった。担当の県水道局県域水道一体化準備室が「ない」と回答した3カ月前の昨年6月に開かれた会議の記録だ。
会議録では、これからの管路更新の在り方を巡り、橿原市上下水道部の職員が「土壌などの現場条件やポリエチリンスリーブの有無でも大きく変わる」と発言していた。
26市町村が一気に事業統合する奈良県の水道広域化プランは、どの地域の工事を優先するのかその順位が焦点。県水道局が2006年から実施している埋設管や水管橋、土壌環境などの調査の経験をどう応用するのか、開示請求ではそうした観点で「ポリエチレンスリーブ装着・非装着について、検討した内容が分かる文書が欲しい」と伝えていた。
文書が「ない」と言われれば、県民は不服申し立てができるし、その結果次第では行政訴訟の道も開かれている。しかし、膨大な時間と労力を費やすことになる。県情報公開条例には「知る権利」という文言もあり、開示請求された文書を一生懸命探す姿勢が大切だ。