奈良県開催・日韓交流K-POP公演 県民限定、本人確認にマイナカード 県の保有率8割、申し込み方法に不満の声
「奈良スーパーアプリ」の日韓音楽交流イベント申し込みフォーム画面
奈良県が10月24日に奈良市内で開催する日韓音楽交流イベントの参加申し込みの方法に対し、不満の声がある。K-POPの公演などが予定されていて入場無料だが、県民限定のため本人確認の方法としてマイナンバーカードが必要。カードを持っておらず申し込めなかった県民の1人は「県民の税金が使われているのに」と「奈良の声」に訴えた。奈良県のカード保有率は現在約8割。
加えて、申し込みは県のオンラインサービスから行うが、マイナンバーカードによる本人認証でスマートフォンの機能を利用するため、申し込みにはスマートフォンも必要となる。
イベントは、日韓国交正常化60周年、韓国・忠清南道との友好提携15周年を記念して行われる。県内の若い世代を中心に韓国文化への理解や日韓友好交流への理解を深めてもらうのが狙い。奈良県、忠清南道それぞれの高校や大学などによるダンスや伝統芸能の披露のほか、K-POPのグループ(FIESTAR〈フィエスタ〉、n.SSign〈エンサイン〉、E11iVYN〈イレブン〉)やK-トロットの歌手(キム・ダヒョン、ユンヒ、ハ・ドングン)の公演がある。会場は、なら100年会館。午後5時から開催される。
県国際課によると、申し込みができる人を県民に限定したのは、イベントが県民対象である一方、申し込み受け付け開始以前から県外から多くの問い合わせがあり、県民が参加できなくなるようなことも予想されたためという。
募集人数は1100人で、これを超えた場合は抽選。募集期間は9月1日~10月8日。申し込みは、インターネット上の県のオンラインサービス「奈良スーパーアプリ」にアカウント登録した上で、同イベントの申し込みフォームから入力。スマートフォンのマイナンバーカード読み取り機能を使って本人認証の操作を行う。
橿原市在住の40代の医療職の女性はニュースでK-POP公演を知り、申し込もうと思った。マイナンバーカードを持っておらず、県国際課にも電話で問い合わせたという。女性は「奈良の声」に「はなからマイナンバーカード一択のやり方に憤りを感じる。県民が納めた税金も使われているのではないのか。行政イベントでこんなやり方をするのは、ふに落ちない」と語った。
総務省が公表している都道府県別のマイナンバーカードの保有状況(2025年8月末現在)によると、奈良県の人口に対する保有枚数率は80.2%(都道府県全体は79.4%)。
しかし、マイナンバーカードがあっても、スマートフォンがなければ申し込めない。
奈良県のスマートフォンの利用は4人に3人の割合にとどまる。総務省が公表している情報通信白書2025年版の「都道府県別インターネット利用率及び機器別の利用状況(個人)」によると、奈良県のスマートフォンの利用者の割合は74.7%(2024年)。都道府県全体では74.4%で、これを年代別で見ると、20歳~59歳では各年代とも90%以上となるが、これより上の年代になると、60~69歳78.8%、70~79歳53%、80歳以上18.7%と低くなっていく。
県国際課は「マイナンバーカード以外にも方法はあるが、県民が市町村役場で住民票などを受け取る手間や、県が申請書類を確認する手間やコストを省ける。県のほかのイベントの申し込み受け付けでも奈良スーパーアプリを活用している。理解いただきたい」と述べた。
同課へのイベントに関する問い合わせの中に、本人確認の方法をマイナンバーカードとしていることや、申し込みにスマートフォンが必要なことについては複数あるという。
特に申し込みにスマートフォンが必要なことについては、10月1日午前の段階で、県がホームページで公開しているイベントの申し込みの案内に記載がない。パソコンで申請手続きを進めた場合、本人認証の段階で先へ進めなくなる。「奈良の声」の指摘に対し県国際課は「案内への追加の記載を検討する」と述べた。
同課は、マイナンバーカードがない人への対応として、問い合わせがあれば、カードを持っている家族や知人の同伴者として参加できることを伝えているとした。アプリから申請する際に同伴者の有無を入力できる。同伴者はイベント当日、会場で免許証やパスポート、学生証など顔写真のある証明書を提示して県内居住であることを示せばよいという。
スマートフォンがない人については、本人のスマートフォンでなくても申し込みの手続きはできるとした。
同イベントの事業費は2900万円。
デジタル庁のホームページはマイナンバーカードについて「住民の申請により市区町村長が交付することとしており、カードの取得は義務ではない」と説明している。
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