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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一

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浅野善一

香芝市役所に喫煙場所、再設置へ 補正予算案を可決 市長、議会決議に抗しきれず

敷地内禁煙の表示がある香芝市役所の入り口=2022年6月23日、同市本町

敷地内禁煙の表示がある香芝市役所の入り口=2022年6月23日、同市本町

 奈良県香芝市役所の敷地内に喫煙場所を再設置する工事費を含んだ市の一般会計補正予算案が23日、市議会6月定例会で賛成多数で可決された。市は2018年から、市役所などの公共施設で敷地内禁煙を実施してきたが、昨年12月、市議会が受動喫煙防止を掲げて「屋外分煙施設」の整備を決議していた。

市民団体「受け入れ難い」

 福岡憲宏市長は5月31日、「喫煙所新設に反対する市民の声」(曽根秀一代表)が開いた学習会に寄せたビデオメッセージで、「市役所内に喫煙所をつくるべきではない」との考えを表明していたが、議会決議に抗しきれなかった。「市民の声」は「受け入れ難い。喫煙場所をつくらせない方向で運動を続ける」と反発している。

 喫煙場所の工事費は50万円。福岡市長によると、喫煙できる場所を指定して、足元に防火シートを敷くことを基本に考えている。さらに実施するとしてもパーテーションを置くことぐらいという。灰皿は置かない。設置場所は検討中で、庁舎屋上も一つの案とする。想定される利用者は職員や議員で、来庁者の一般市民が利用できるようにするかどうかは検討中という。

 可決された同補正予算案には、乗降客の多い近鉄五位堂駅前の広場(市有地)への分煙施設整備を検討するための業務委託料62万円も含まれている。

 同補正予算案の採決では、中井政友議員(共産党)が反対の立場から「2018年に市受動喫煙防止条例を決議しており、喫煙所がない状態から新たに設置することには反対。現在は喫煙を断ち、禁煙を後押しすることが求められている」などと述べた

 眞鍋亜樹委員(無所属の会)は賛成の立場から「喫煙所設置反対のために、子供たちの給食費や医療福祉など住民サービスをすべてストップすることは信じ難い。設置に反対するのなら修正案を出すのが議員の責務」などと述べた。

 これに対し、筒井寛議員(enjoy香芝)は「補正予算案から喫煙所設置の予算を分割し、順次採決していくことも可能。約3600人の署名を伴った喫煙所反対の要望書が出ている中で、他の必要な予算と組み合わせて作られた」と批判、可決に反対した。

 採決の結果は賛成10人、反対5人だった。

 このほか、「市民の声」が議会に提出していた「市役所敷地内に喫煙場所を設置しないことを求める請願書」も賛成少数で不採択となった。

 福岡市長は、ビデオメッセージでの表明とは反対の方向になったことについて、「議会の決議と市民の請願は相反するが、いずれも大切な民意。両方の考えを尊重して、受動喫煙が起こらない状況ができるのかどうか実験的にやるしかない」と釈明した。

 決議を提案した眞鍋議員は「皆さんと一緒に出した決議の通りに進んだことは評価したい。受動喫煙防止が進むと考える」と述べた。

 「市民の声」事務局の中瀬弘さんは「請願不採択の意思を示した議会と議会の意向を受け入れた市長のどちらも受け入れ難い。福岡市長はビデオメッセージで、気持ちは市民の皆さんと同じと述べた。市民の方を向いてもらえるよう、市長との話し合いを続けたい。市が喫煙場所の予算を執行しないよう、より市民の声を集めていきたい」と述べた。 関連記事へ

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