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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一

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浅野善一

検証)香芝の分煙施設求める決議可決 設置場所示されぬまま 賛成の数に押されて通る

奈良県香芝市役所の入り口に掲げられた敷地内禁煙の表示=2022年2月、同市本町

奈良県香芝市役所の入り口に掲げられた敷地内禁煙の表示=2022年2月、同市本町

 市役所などの公共施設で敷地内全面禁煙を実施している奈良県香芝市。その市議会が昨年12月、市に「屋外分煙施設」の整備を求める決議(→記事の最後に全文)を可決した。しかし、決議には肝心な点が抜けていた。どのような場所に分煙施設の設置を求めるのか、具体的に示していない。設置場所を市に選択させれば、場所の選定に責任を負わなくて済む。そのような決議が賛成議員の数に押されて通った。決議の内容、議会での審議を検証した。

 決議に法的効果はないが、議決を経た議会の意思表示は重く、市は対応を検討している。

 可決されたのは「健康増進法の適正な運用と更なる増進を求める決議」。提案したのは眞鍋亜樹議員(無所属)。提出された決議案には3議員が賛成者として名前を連ねた。

 決議は、健康増進法や総務省の通知、市受動喫煙防止条例を挙げて、「香芝市においては、望まない受動喫煙の防止のさらなる推進のため、屋外分煙施設等の適切な措置が講じられなければならない」と主張。市への要請として「この決議後においては、速やかな措置を講じ、予算が必要なものについては、速やかな予算措置を行うこと」と記している。

 分煙施設をどこに設置すべきなのか、決議は、受動喫煙防止条例の「市の責務」を示した「市は、自ら設置し、又は管理する施設について、受動喫煙による市民の健康への悪影響が生じないよう適切な措置を講じなければならない」との規定に言及しているものの、場所を特定した具体的な記述はない。

 受動喫煙防止の取り組みという点で、同市は2018年4月に市受動喫煙防止条例を施行、同時に市役所などの公共施設で敷地内禁煙を実施した。県内市町村で最も早く本庁舎、議会棟の敷地内禁煙を実施したのは王寺町(2012年)、次が平群町(2016年)、3番目が香芝市だった。

 決議に反対した議員たちは市役所への設置を懸念する。

たばこ業界が総務大臣に要請

 決議の表題は、厚生労働省が所管する健康増進法を前面に出しているが、市に屋外分煙施設整備を要請するに当たって最もよりどころとしたのは、総務省の通知。

 2022(令和4)年1月20日付で都道府県市町村などにあてた「令和4年度地方税制改正・地方税務行政の運営に当たっての留意事項等について」で、政府が2021年12月24日に「令和4年度税制改正の大綱」を閣議決定したことを受けて発せられた。

 通知は、地方のたばこ税に関して、自民・公明両党の令和4年度与党税制改正大綱が示した「基本的考え方」に留意するよう求めている。

 「基本的考え方」とは、「望まない受動喫煙対策の推進や今後の地方たばこ税の継続的かつ安定的な確保の観点から、地方たばこ税の活用を含め、地方公共団体が駅前・商店街などの公共の場所における屋外分煙施設等のより一層の整備を図るよう引き続き促すこととする」というもの。

 総務省は、この「基本的考え方」に「健康増進法も踏まえ」の一言を加えて通知とした。通知には、屋外分煙施設の整備に要する経費について、同省が所管する特別交付税の措置を講じていることも記された。

 全国たばこ販売協同組合連合会を発行元とする組合員向け媒体、全国たばこ新聞の2022年3月号に、総務省の通知について報じた記事がある。たばこ業界から総務大臣への要請活動が通知に反映されたと伝えている。以下は記事の冒頭部分。インターネットでウェブ版を閲覧できる。

 「総務省自治税務局は、1月20日付けで各都道府県等宛に〈地方たばこ税の継続的かつ安定的な確保のためにも、積極的に地方たばこ税を活用した屋外分煙施設等のより一層の整備を促す〉旨の事務連絡(通知)を発出した。令和2年以降連続して3度目の本通知は、地方行財政を所管とする総務省のトップである、金子恭之総務大臣(衆議院議員・熊本4区、自民党たばこ議員連盟幹事長代理)の、たばこ業界の「地方たばこ税を活用した分煙環境整備の促進」の要請活動に対する深い理解と力強い尽力が色濃く反映されて実現したものといえる」

 受動喫煙を巡っては、2018年7月、健康増進法を一部改正する法律が公布され、受動喫煙防止が追加された。同法で第一種施設と呼ぶ病院や学校、行政機関などが2019年7月から原則敷地内禁煙となった。

 決議は「健康増進法の改正趣旨」について、「望まない受動喫煙の防止のため、公共の場所における屋外分煙施設の設置等を推進することにより、喫煙しない市民への更なる配慮した措置が求められている」との解釈を示す。

 同法は第一種施設について、屋外において受動喫煙防止措置が取られた「特定屋外喫煙場所」の設置は可能とする。しかし、「推奨するものではないことに十分留意すること」と、厚労省は2019年2月22日付で都道府県知事などにあてた通知「『健康増進法の一部を改正する法律』の施行について」で、くぎを刺している。

 また、厚労省ホームページで公開されている「健康増進法の一部を改正する法律 概要」によれば、「改正の趣旨」は「多数の者が利用する施設等の区分に応じ、当該施設等の一定の場所を除き喫煙を禁止」し、「喫煙場所の特定を行う」というものである。

 「健康増進法の改正趣旨」に、総務省の通知にあるような「屋外分煙施設の設置等を推進」を重ねるのは、解釈の拡大ではないか。

正面からの答弁なく

 決議案の審議でも設置場所が繰り返し議論になった。

 決議案が提出された昨年12月17日の12月定例会本会議での、清川希代子議員(日本維新の会)の質問と提案者の眞鍋議員の答弁。

 「どのような公共の場所へ屋外分煙施設の設置を想定しているのか」

 「行政関係施設なので第一種施設に分類される」

 「決議案にある公共の場所とは道路や公園、駅前や商店街などを指す。市役所などの公共施設施設内への設置ではなく、公共の場所への設置を求める決議案との解釈でいいか」

 「第一種施設を利用する者が通常立ち入らない場所に設置することという決まりがあるので、そういう所への設置となる」

 眞鍋議員は問われていないことを説明した。

 次の質問者、筒井寛議員(ejoy香芝)は畳み掛けるように尋ねた。そのやり取り。

 「市役所や市役所の分庁舎と考えられる福祉センター、保健センターの敷地内は、この(決議の)『市は、自ら設置し、または管理する施設』に含むのか含まないのか」

 「含むのか含まないのかということであれば含む」

 また、青木恒子議員(共産党)の質問に答えて、「敷地内禁煙は3年半を経て定着した」としながらも、市役所などを例に「敷地を一歩出た所、不特定多数の方が通る場所で喫煙されているという実情がある」などと述べた。

 これらの答弁から、市役所を含む第一種施設が決議の対象と受け止められた。

 決議はこの日、賛成多数で可決された。賛成は10人で自民党3人、公明党3人、日本維新の会1人、enjoy香芝1人、無所属2人。反対は5人で共産党2人、日本維新の会1人、enjoy香芝1人、無所属1人。同一会派内で立場が分かれたところもあった。

 決議を受けて、市民団体「喫煙所新設に反対する市民の声」(曽根秀一代表)が発足した。同団体は決議から2カ月後のことし2月14日、市の公共施設敷地内に喫煙所を新設しないよう求める請願書を市議会に提出した。「奈良の声」や複数の新聞は決議を批判的に伝えた。

 ことし3月3日の3月定例会本会議の一般質問。眞鍋議員は福岡憲宏市長に決議への見解を尋ねた際、「一部誤った報道にあるような場所の特定は決議書ではしていない」と決議を伝えた報道に言及した。そうしたところ逆に市長から問い返された。

 「決議をいただいているので、当然、庁内で会議をしているが、(昨年12月の)決議では話の中心は市役所であったように感じたが、そうではないのか」

 「決議文は市役所の中に作ってくださいとは書いていない。答弁の中で例として市役所を出したことはある」

「市に丸投げいけない」

 昨年12月に可決された決議は事実関係に誤りがあった。自民・公明両党による「与党税制大綱」、政府が閣議決定した「税制改正の大綱」、総務省通知の「地方税制改正の留意事項」を混同する内容になっていた。筒井議員がこれに気付き、当初の決議の取り消しを求める決議案を、3月定例会最終日の3月24日に提出した。眞鍋議員も問題の箇所を改めた決議案を、4議員の賛成者の名前を連ねて再提出した。

 再提出された決議の主張自体は大筋で変わっていなかったが、本会議であらためて審議が行われた。

 昨年12月の採決で決議に反対した清川議員が質問した。そのやり取り。

 「12月に提出されたときの説明では、市役所などへの設置も含むと答弁しておられた。その趣旨は変わっていないか」

 「公共の場所に求めるものである」

 「提出者の責任としてすべてを理事者に丸投げではいけない。どこに屋外分煙施設を設置すべきとお考えか、具体的に答えて」

 「私は執行者ではないのでどこという発言はできない」

 続いて筒井議員が質問。そのやり取り。

 「(清川議員への答弁の中にあった)公共の場所に改正健康増進法が定める第一種施設は含むのか」

 「市内の公共施設なども含まれる」

 質問に対する正面からの答弁はなかった。

 再提出された決議は賛成多数で可決された。賛成は9人で自民党3人、公明党3人、日本維新の会1人、無所属2人。反対は6人で共産党2人、enjoy香芝2人、日本維新の会1人、無所属1人。

 一方、誤りが分かった当初の決議の取り消しを求める筒井議員提出の決議は賛成少数で否決された。「喫煙所新設に反対する市民の声」が、市の公共施設敷地内に喫煙所を新設しないよう求めて提出していた請願書も、賛成少数で不採択となった。

 3月24日の本会議終了後、眞鍋議員は報道陣の取材に応じた。分煙施設をどこに設置すべきと考えているのか、具体的に市民に示すべきではないかとの質問に返ってきた答えは「議会で答弁した通り」だった。

 取材は議長室で行われた。取材は眞鍋議員に申し入れたものだったが、同席した川田裕議長が決議を支持する持論を述べ、眞鍋議員本人が語る場面は少なかった。

佐賀では設置場所明確にした請願書

 他県では、分煙施設の設置場所を明確にした上で議論が行われた例もある。佐賀県たばこ販売協同組合など3団体がことしの県議会2月定例会に提出した「県庁舎敷地内などへの分煙環境整備に関する請願書」が全会一致で採択された。請願書は、敷地内禁煙を実施している県庁への喫煙場所の再設置を求めている。

 眞鍋議員はことし3月3日の3月定例会一般質問で次のように述べた。「受動喫煙防止や屋外分煙施設の話をする際、喫煙者をすべて悪く言うのではなく、喫煙者対非喫煙者というような構造でもない。香芝市全体として受動喫煙防止の取り組みに対して、どちらの立場の方も心地良く過ごせるようにと考えている」

 そうであれば、議会の分煙施設設置派は結果を急がず、一度、決議を取り消し、設置場所も明確にした上で、市民や識者も交えて、議論し直すことを考えてもよいのではないか。 関連記事へ

【健康増進法の適正な運用と更なる増進を求める決議】

令和4年3月24日可決

 健康増進法では、国及び地方公共団体の責務として、望まない受動喫煙が生じないよう、受動喫煙に関する知識の普及、受動喫煙の防止に関する意識の啓発、受動喫煙の防止に必要な環境の整備その他の受動喫煙を防止するための措置を総合的かつ効果的に推進するよう努めなければならないと規定される。

 平成30年には、健康増進法の一部が改正され、その趣旨として、「望まない受動喫煙をなくす」、「受動喫煙による健康影響が大きい子ども、患者等に特に配慮」、「施設の類型・場所ごとに対策を実施」とされた。

 また、令和3年12月24日には、令和4年度税制改正の大綱の閣議決定が行なわれた。そして令和4年1月20日付けの総務省通知には、令和4年度地方税制改正の留意事項等として、地方のたばこ税に係る対応については、屋外分煙施設等の整備の促進として、健康増進法の改正趣旨を踏まえ、「望まない受動喫煙対策の推進や今後の地方たばこ税の継続的かつ安定的な確保の観点から、地方たばこ税の活用を含め、地方公共団体が駅前・商店街などの公共の場所における屋外分煙施設等のより一層の整備を図るよう引き続き促すこととする。」と記されているところである。

 即ち、健康増進法の改正趣旨は、望まない受動喫煙の防止のため、公共の場所における屋外分煙施設の設置等を推進することにより、喫煙しない市民への更なる配慮した措置が求められている。また国の方では、その措置に対し、所要の地方財政措置も講じられている。

 これらは、市の大きな安定した財源とされるたばこ税の継続的かつ安定的な確保にも資することは言うまでもない。

 そして、平成30年には、「香芝市受動喫煙防止条例」が、香芝市議会から発議され、可決し、公布にも至っている。

 同条例第6条には、「市の責務」が規定され、その第1項には、「市は、受動喫煙による市民の健康への悪影響を未然に防止するための環境の整備を推進 する責務を有する。」とされ、その第4項には、「市は、自ら設置し、又は管 理する施設について、受動喫煙による市民の健康への悪影響が生じないよう適 切な措置を講じなければならない。」と、義務的措置の規定が定められている。

 よって、香芝市においては、速やかに望まない受動喫煙の防止の更なる推進のため、屋外分煙施設等の整備の設置を行う適切な措置が講じられなければならないと判断する。

 以上の趣旨から、香芝市は、この決議後においては、速やかな措置を講じ、予算が必要なものについては、速やかな予算措置を行うことを要請する。

 以上、香芝市における団体自治の意思決定とし決議する。 関連記事へ

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