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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一

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ジャーナリスト浅野詠子

奈良県域水道一体化構想当初 県作成の市町村議会Q&Aが投げ掛けるもの

市町村に配布されていた県域水道一体化の市町村議会Q&A

市町村に配布されていた県域水道一体化の市町村議会Q&A

 奈良県営水道と26市町村の水道を統合し、2025年度に企業団設立を目指す県域水道一体化計画。県が水道の広域化を進めるに当たっての市町村議会に対する当初の認識をうかがわせる資料がある。構想を打ち上げた3カ月後の2018年1月、関係市町村に配った県作成の「一体化にかかる市町村議会想定問答」(Q&A)だ。

 A4判3ページ。15の項目がある。このうち「水道事業を統合している事例は」との質問には全国の6例を挙げ、こうした先行事例について「統合後にどのようなメリットが出ているのか」との質問には「統合後は施設整備等が計画通り着実に進められており、統合の効果も十分に得られていると聞いている」との回答を例示した。しかし、それらの根拠は示されていなかった。また、災害の激甚化に向き合うようなQ&Aもなかった。

 構想の実現は間近だ。県のリーダーシップにより赤字の弱小水道は解消されるが、健全経営の市町村水道も統合される。これに伴い、地下水など暮らしに身近な水源を持つ4市の浄水場5カ所が廃止に向かう。

 取材に対し、県水道局県域水道一体化準備室は2018年2月、五條市内で開催した「五條・吉野エリア水道広域化推進検討会」(中止、県・22市町村水道と統合)に向け、会議に付属する資料として地域政策課が作成し、同市と3町にのみ配布したと説明した。

 しかし、記者が奈良(一体化不参加)、橿原、生駒の3市に開示請求をしたところ、奈良市は文書不存在だったが、橿原市は今年2月、同Q&Aを開示。市によると、第1回県域水道検討会(2018年4月)の開催に向けた同年1月の市町村対象の説明会場で配布されたという。生駒市については、同年2月16日、県水道局から電子メールで送られていたことが確認できた。Q&Aは広範囲の市町村に配布されていた可能性がある。

 県域水道一体化準備室は「水道広域化に関する市町村の疑問を解消する助けとして作成したが、議会対策と銘打ったタイトルはよくなかった。作るべきものではなかった」と話した。

 県作成のQ&Aは広域化の先行事例を高く評価したが、奈良市は昨年、広域化の課題を拾い出している。水道施設の維持管理に関する委託費や建設費において、必ずしもスケールメリットが発揮されていない団体があるとした。

 生駒市上下水道部は「県作成の市町村議会Q&Aは経営統合を模索していた当時の想定問答なので、事業統合を進める現在の状況とは異なる。予定通り5年保存で廃棄する」と話した。 関連記事へ

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