職員が交付申請を代行 奈良県安堵町、廃棄物排出組合への補助金問題 職務外「慣例的に」
安堵町同和地区産業廃棄物処理組合が町に提出した補助金交付申請書(住民訴訟原告の池田忠春さん提供、画像の一部をぼかしています)
奈良県安堵町が町同和地区産業廃棄物処理組合に2020年度に交付した補助金が住民訴訟の判決で違法な支出とされた問題を巡り、同組合事務の一部を町職員が職務外で「慣例的に」代行していたことが、町への取材で分かった。町への補助金の交付申請や廃棄物処理業者への支払いを行っていたという。問題が浮上する中、これまで町は取材に対し、組合の誰が交付申請をしていたのか判然としていないと説明していた。
同補助金は、組合員の事業者が排出した廃棄物の処理費用を補助するものだが、住民訴訟では、組合が提出した交付申請書に添付すべき処理業者の領収書が添付されていなかったことが明らかになった。今年1月9日の判決では、2020年度の補助金8カ月分216万7200円について、廃棄物の排出・処理の事実が確認できないとして違法な支出とされ、西本安博町長個人が賠償した。
また、補助金には県費が含まれていたことから、県は県費分24万円の返還を受けるとともに過去の分についても実態確認を求めた。町は県に報告していた廃棄物の処理量が推測した数字で根拠を示せなかったため、県は10月22日付で2014年度以降の県費分計221万5000円の補助金を取り消すとともに返還を命じた。
「奈良の声」の取材に対し、町住民生活部長が明らかにした話では、町の出先の部署の職員が「慣例的に組合事務の一部を代行していた」という。職員は町の聞き取りに対し、過去にその部署の当時の上司から指示があったと説明。以前に作成された申請書類を渡され、それを元データとして毎年、日付だけを変えて、町の担当課に提出していたという。補助金の振込先となる組合長名義の通帳もこの部署で管理し、処理業者への支払いも行っていたという。同部長は「組合は町とは別の組織で、交付申請は組合の職務」と話した。
職員はその部署の職員が事務を代行するようになった経緯について「恐らく組合の責任ある方から頼まれたのではないか」と自身の推測として話したという。職員は「奈良の声」の取材に対しても「組合の事務の一部は代行していた。通帳を預かっていたこともある」と認めたが「(詳細は)自分たちの口からは言えない。取材の窓口は一つにしないと。町に聞いて」と話した。
同補助金制度の運用が始まったのは1989年。町によると補助金の交付額は、県費分の返還を命じられた期間では、2014~2019年度が361万2000円、2020年度が325万800円。2021年度以降は組合からの交付申請はなく、住民訴訟判決後、町は制度を廃止した。
町は組合員からの聞き取りも実施した。組合の2020年度の補助金交付申請書に添付されていた組合員名簿には14事業者の名前があった。町が接触できたのは5事業者ほどで、このうち2事業者は事業を継続していて、「(2021年度に)町の補助金がなくなったので処理費用が高くなった」と話す事業者もあったという。一方、このほかの事業者は10年から数年前までに「廃業した」と説明したという。
組合に交付された補助金が適正に使われていたかどうかについて、町住民生活部長は「(2021年9月にあった)住民監査委請求で監査委員が組合の通帳を確認したところ、振り込まれた補助金の額と引き出された額、処理業者の領収書の金額は一致していた」とした。
一方、廃棄物の排出・処理を巡っては、住民訴訟での町代理人弁護士の主張は一環していなかった。「奈良の声」が奈良地裁で裁判記録を確認したところ、町代理人は当初、証拠として処理業者の「2020年4月から2021年3月まで、組合の委託を受けて、産業廃棄物の収集運搬を実施していた」とする陳述書を提出。
しかし、その後、2020年8月以降については「収集運搬をしていなかった」と訂正。さらに後の主張では、8月以降に組合が廃棄物を排出していたかどうかについては「積極的に争わない」としつつも、この期間にも「組合から排出された廃棄物を収集し、委託費用を受領していた」と変遷、組合に交付した領収書の控えを証拠として提出していた。