関西広域)氷張るため池で恒例「かいぼり」 兵庫県明石市、底の泥流し海へ養分
氷が張るため池の泥をかき出す人たち=2025年2月8日、兵庫県明石市大久保町松陰、浅野詠子撮影
ため池の底にたまった泥を川に流し、その養分を海に届ける恒例の「かいぼり」が、兵庫県明石市大久保町松陰の下川池で行われた。池を管理する農業者や漁業者らが厳寒の中、氷の張った水に腰まで浸かり、泥のかき出しに奮闘した。
池の水を抜く「かいぼり」は古くから農閑期の冬期に行われており、人々は堤体を補強したり、池の泥を田畑の堆肥にしたり、採れた魚類をタンパク源にしたりしてきた。池底の腐葉土は窒素やリンを含んでいることから、川や海の生物の種類を増やし、海の再生につながると期待されている。「かいぼり」の価値が見直され、兵庫県東播磨県民局は2010年度から、明石市は2014年度から里と海の協働と位置づけ推奨している。
松陰ため池協議会、明石市漁業組合連合会が主催。市民ら約100人が集まった。真冬の風物詩を体験しようと、東京都内から訪れたボランティアグループもいた。池から河口まで約3キロ。同漁業組合連合会副会長の西尾幸洋さんは「ノリの生産も順調です。もっともっと良い海にしたい。どうか協力をよろしくお願いします」とあいさつした。
参加者らは胴長靴を着用し、泥さらいの用具を手に冷たい水に浸かり、力を振り絞りながら池底の泥を懸命に攪拌(かくはん)した。この後、地元の消防団員らが消防ポンプで放水して泥を含んだ池の水を押し流し、川への放流を促した。
こうした取り組みは15年前から近隣の複数のため池で実施されてきた。県東播磨県民局いなみ野ため池ミュージアム担当参与・森脇馨さんは「海の再生という大きなテーマに対し、プールに目薬を差すようなものと言われたこともあるが、『かいぼり』はノリの養殖に役立っている。堤体保全の技術が進歩し、昔のように池干しをせず、ためっ放しの池も見られるが、毎年『かいぼり』をし、毎年放流するからこそ、池の価値を人々が見つめ直す好機になっている」と話した。