チューリップ「関西最大級」うたい文句消える 奈良・県営馬見丘陵公園「数こだわらず」 物価高騰、他府県施設も影響
チューリップの花畑が広がる公園を散策する人たち=2025年4月12日、奈良県河合町、広陵町にまたがる県営馬見丘陵公園、浅野善一撮影
奈良県は、花の植栽に力を入れる県営馬見丘陵公園(河合町、広陵町)の春の一番の目玉となるチューリップの株数を今年、過去最大だった2年前のほぼ半分の35万株に減らした。株数の多さをPRする「関西最大級」のうたい文句も消えた。県は物価高騰を理由に挙げる。こうした社会状況はチューリップに力を入れる関西のほかの公園にも影響している。
同公園ではこの4月5日から13日まで、チューリップの開花に合わせ「はるいろマルシェ in 馬見チューリップ」が催された。約56ヘクタールの広大な公園のあちこちに色とりどりのチューリップの花畑が広がり、来場者を楽しませた。地元特産品の販売、飲食を提供するキッチンカーやテントの出店もあった。入園は無料。
担当の県中和公園事務所によると、株数が少なくなった分、花畑の数を減らしたが、一方で植え方を変えたり、同じ時期に咲くネモフィラを増やしたりして、見せ方を工夫した。また、催しの在り方についても見直し、ステージイベントをやめる一方、周辺4町の特産品販売(マルシェ)など地元のPR、活性化につながる企画に重点を置いた。
県がチューリップに力を入れるようになったのは2014年で、第1回「馬見チューリップフェア」が開催された。このときの規模はチューリップを中心に20万株。以降、毎年10万株ずつ増やし2017年には50万株に。荒井正吾前知事(2007~23年)の「目標は100万株」の号令の下、2019年ごろからは「関西最大級」がうたい文句にもなり、2022、23年は過去最大の65万株となった。
しかし、2024年の第11回フェアは前年より8万株減らして57万株に。材料費や人件費の高騰を理由とした。今年は株数を減らすとともに催し名も改めた。同公園事務所は「奈良の声」に対し、株数を減らした理由について昨年と同様、「球根代、球根の運搬費用が高騰している」などと説明した。チューリップの球根はほかの花に比べると単価が高いという。
関西にはほかにもチューリップに力を入れる公園がいくつもある。花博記念公園鶴見緑地(大阪市、今年の植栽数1万4000株)、万博記念公園(大阪府吹田市、同約8万本)、兵庫県立フラワーセンター(加西市、今年の球根数14万個)、淡路島国営明石海峡公園(兵庫県淡路市、同16万8000個)、たんとう花公園(同県豊岡市、同約50万個)、滋賀農業公園ブルーメの丘(同県日野町、同12万個)などだ。(数は「奈良の声」が各公園に聞いた。数え方は公園によって異なった。花博記念公園以外は入園料が必要)
万博記念公園は、チューリップの数は昨年と同じだが過去には10万本だった時期も。物価高騰の影響について「球根の仕入れ先が馬見丘陵公園と同じ。年々価格が上がっている。ほとんどがオランダからの輸入で輸送費も上がっている」とした。
兵庫県立フラワーセンターも昨年と同数だが過去には20万個(球根)だった時期も。入園者数減と球根の値上がりを減少の理由に挙げた。淡路島国営明石海峡公園は昨年より1万個増やした。「球根の仕入れ値が高騰しているが、ほかの経費を充てて対処している」とした。
たんとう花公園(同県豊岡市)は「当初は約100万個で始めたが減らしてきた」といい「球根が値上がりし、手に入らないこともある」とした。滋賀農業公園ブルーメの丘は昨年と同数だが「品種の数を減らしたり、価格の高い品種をやめたりして、数を減らさないようにしている」とした。
馬見丘陵公園は今年、株数が大幅に減ったものの、関西では引き続き有数の規模だった。中和公園事務所は「昨今の物価高騰の状況は今後も続くだろう」とし、「数にこだわらず、見せ方を工夫し維持できれば」と話した。
同公園の今年の催し期間中の入園者数は8万7200人で、昨年より約2万5000人少なかった。最終日の日曜日が雨で天候が荒れたことが大きく影響したという。