県庁職員食堂のレストラン化断念、問われて初めて表明 知事の姿勢に不信
【視点】奈良県庁6階の職員食堂を改修して「眺望の良いレストラン」を整備するとした計画の断念。荒井正吾知事は昨年11月25日の定例記者会見で問われて初めて、「ちょっと方針変更があったと申し上げなければならない」と表明した。レストラン化を検討するだけでも、コンサルタント会社への業務委託費用が発生している。県民皆の財布からの支出だ。説明をないがしろにする姿勢に不信感が募った。
県は11月18日、計画断念には触れず、職員食堂の食事提供事業者が決定したことのみを知らせる記者発表をした。県ホームページで公開されている県政・経済記者クラブ主催の記者会見の動画によると、この発表について、記者側が「(レストランは)奈良公園基本戦略の中で位置付けとしては大きかった。変更するならもう少し丁寧な説明があった方が良かったのでは」などと、荒井知事にただした。
計画断念の理由について荒井知事は、食堂キッチンの大幅な移動には、とてもお金が掛かって大変と分かったと説明した。県奈良公園室によると、厨房を変更すると、配管の変更など工事影響範囲が大きくなり、費用が増大するとのことだ。
県はどのようなレストランを想定していたのか。「奈良の声」は、県に関係文書の一部を開示請求して入手した。県が12年度、コンサルタント会社に委託して策定した県庁観光拠点空間づくり基本計画の図面によると、県庁6階の北西側にある職員食堂を、興福寺が望める南西側に移動、さらに、東大寺や若草山が望める東側にカフェを新設するというもの。隣接する奈良公園の観光客を念頭に置いたものだった。
レストランの案の一つとして作成された想像図では、テーブルやいすなど高級感を意識した客席を配置した店内で、正装した給仕が客に応対している様子が描かれていた。職員食堂はセルフサービスだった。
同基本計画は、県庁にレストランやコンビニエンスストアを整備することを想定して策定された。コンビニは具体化し、14年3月開店したが、県庁が市街化調整区域にあることから、同年11月、奈良市などから都市計画法に抵触する恐れがあるとの指摘が出た。県は、レストランやコンビニの整備について、市に対し、職員の福利厚生施設と説明してきたが、コンビニは年中無休営業やアルコール飲料の販売が一般客相手ではないかとして、問題になっている。こうした点でレストラン化には批判が伴うことも予想された。
関連する支出はどれくらいあったのか。開示された支出負担行為決議書などによると、基本計画策定の委託費用は約1392万円。一方、レストランの設計業務は当初約2167万円で発注したが、設計変更に伴い基本設計までの契約となり、約565万円に減額された。あらためて実施設計の予算約1446万円が昨年9月の補正予算に計上された。県管財課によると、昼食時間帯以外の客席は、職員の打ち合わせなど多目的に使えるオープンスペースにする。