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地域の身近な問題を掘り下げて取材しています

発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一
浅野善一

奈良市議会 市民への報告会で、土地開発公社疑惑「追及する考えない」 困難理由に 記者が参加者として質問「調査を」

奈良市議会報告会の意見交換の場で、議員に向かって質問する市民=2016年5月20日、同市役所

奈良市議会報告会の意見交換の場で、議員に向かって質問する市民=2016年5月20日、同市役所

 奈良市議会報告会が20日夜、市民らを対象に同市役所で開かれた。一奈良市民でもある記者は参加者の一人として質問、市に巨額の借金を残した市土地開発公社(2013年3月解散)をめぐる疑惑の調査に取り組むよう求めたが、議会は、土地取得からの時間の経過や証拠の散逸などを挙げて、法的責任の追及は困難とし、「問題を追及する考えはない」と応じなかった。(記事の最後に質問と回答の全文)

 議会報告会は市議会基本条例に基づくもので、議会が説明責任を果たすため、少なくとも年に1回以上、議員全員の参加により開かれることになっている。この日は市民ら69人が参加、前半はこの3月例会の議案審議の経過や結果について、各常任委員会の委員長らが報告した。後半は参加者との意見交換に充てられ、議会が事前に募った質問に口頭で答える形で進められた。

記者「議員が疑惑に関与」

 記者は、土地開発公社をめぐる問題の責任があいまいなままになっていることについて質問した。疑惑の一つ、西ふれあい広場の用地取得をめぐる住民訴訟では、奈良地裁がこのほど請求を棄却し(大阪高裁に控訴)、責任追及は果たされなかった▽市が設置した市土地開発公社経営検討委員会の報告書は議員の関与も指摘しており、議員が借金の原因を作った可能性がある▽議会は口利きなど自らの行いについて自己点検し、市民に説明する責任がある―などと述べて、議会の責務として百条委員会を設置し、調査すべきと求めた。

議会「数多く議論した」

 これに対し、回答者の森田一成・議会運営委員長は、「土地開発公社の運用に問題があったことから、議会も本会議、委員会を通じて数多く議論をした。土地取得から時間が経過、証拠が散逸、また、非公表を前提に関係者の聞き取りをしたという土地開発公社経営検討委員会からの最終報告も踏まえ、法的責任の追及は困難」と経緯を説明、「問題を追及する考えはない」と述べた。

 疑惑への議員の関与や口利きについての言及はなかった。「法的責任の追及は困難」との説明の根拠の部分は、検討委員会が報告書で示した見解をそのまま語ったものだった。

 記者は再質問し、「最終報告書は終わりではなく、疑惑解明の始まり。そのヒントがたくさんある。疑惑解明に取り組まないのは、市民に背を向けること」とただした。森田委員長は「議会として取り上げる考えはない。意見としてたまわる」と回答、議会の立場を繰り返し述べるにとどまった。【続報へ】

〈百条委員会〉自治体の事務で問題が生じたときに議会が設置する特別委員会。地方自治法100条1項で認められた議会の調査権が与えられる。関係者の出頭や証言、関係書類の提出を請求できるなど、権限は強力で、正当な理由なく出頭や提出を拒めば、罪に問われる。

【記者の質問】(事前に文書で提出)

 表題「市土地開発公社は市に巨額の借金を残したにもかかわらず、責任はあいまいなまま。議会は百条委員会を設置し、問題の解明をすべき」

 このほど西ふれあい広場計画をめぐる住民訴訟の判決があった。市民は問題の責任が明確になることを期待したが、奈良地裁は住民の請求を棄却した。私は個人でネット新聞を運営しているが、一市民が当時の関係文書を開示請求し、元職員に話を聞いただけでも、土地開発公社経営検討委員会の報告書にはない事実を掘り起こすことができた。

 一方、報告書は議員の関与も指摘しており、議員が借金の原因を作った可能性がある。私が取材した元職員も「公園計画は、市議や国会議員から土地があるから買ってくれと持ち込まれた話が発端であることが多い」と証言した。議会は口利きなど自らの行いについて自己点検し、市民に説明する責任がある。従って、議会の責務として百条委員会を設置し、調査すべきと考える。ご回答を。

【森田一成・議会運営委員長の回答】(口頭による)

 土地開発公社については、平成24(2012)年度末をもって解散されている。解散に当たり、24年6、9月の定例会を中心に議論がされ、最終的に議会がその解散の議決をした。土地開発公社による土地の取得は議会の議決を要しなかったことから、結局多額の負債を後世まで残すこととなった。このことの責任をとのご質問である。

 平成24年6月の土地開発公社解散プランによると、公社には平成23(2011)年度末時点で185億円を超える借入金残高があり、年間金利負担は4億円に及ぶ。この債務の処理をいつまでも先送りすることは、後の世代に負担を先送りすることにほかならず、24年度中に3セク債を用いて、公社を解散するとされている。

 土地開発公社の運用に問題があったことから、当然、議会も本会議、委員会を通じて数多く議論をした。議決後、その責任についての議論ももちろんであったが、土地取得から時間が経過している、証拠が散逸している、また、非公表を前提に関係者の聞き取りをしたという土地開発公社経営検討委員会からの最終報告も踏まえ、法的責任の追及は困難であるということから、問題を追及する考えはない。

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