奈良市西ふれあい広場用地取得めぐる住民訴訟の控訴審判決 大阪高裁も訴え退ける 原告は上告
奈良市の西ふれあい広場計画で、市土地開発公社(2013年3月解散)に不必要な土地を高額で先行取得させたのは違法として、市を相手取り、当時の大川靖則・元市長らに土地の取得費用約21億円を損害賠償請求するよう求めた住民訴訟の控訴審の判決言い渡しがこのほど、大阪高裁であり、山田知司裁判長は原告の訴えを退けた。原告は最高裁に上告した。
原告の市市民オンブズマンの桐山幸矩代表は「奈良の声」の取材に対し、「これだけ大きな問題を高裁で負けたからおしまいというのでは尻切れとんぼになる。最後の最後まで闘う意思を持っていないといけない。利権絡みの事件であったことは間違いないと思う。どういうことが行われたか、市民に知らせた方が良い」と上告の理由を述べた。
控訴審判決は昨年12月2日付。上告は同月14日付。原告は、奈良地裁が昨年4月26日、請求を棄却したのを受け、控訴していた。
同計画は、土地の売り主が計画用地の一部となる土地を寄付したことがきっかけとなったが、判決は、同土地には進入路がなかったと指摘、「市がどのような意図で土地の寄付を受けたのか疑問がないわけではない」と述べた。
また、計画用地のうち実際に取得された土地は一部の所有者の土地で、他の所有者の土地については取得に向けての動きが何ら見られなかったと指摘、特定の所有者の「土地買い取りそのものに特別な意図があるのではないかとの疑念を生じさせる事情といえる」と疑問を呈した。
しかし、判決は「建設計画自体は、計画書の図面や内容からしても実体のないものとはいえない」などとして、「土地取得の必要性はなかったとはいえない」と判断、計画は土地取得の名目にすぎなかったとする原告の主張を認めなかった。
土地の買い取り価格についても、一審で奈良地裁が実施した土地の鑑定で取得額と鑑定の評価額の間に最大約77%の開きがあったことに対し、「必ずしも小さなものではない」と指摘したものの、当時も専門家である不動産鑑定士の鑑定を参考に決められたもので、「価格の決定方法には相応の合理性がある」と述べ、「不相当に高額とはいえない」と結論付けた。
西ふれあい広場計画は、地元の地主が1991年、障害者福祉のためにと市に寄付した同市二名7丁目の山林内の土地約2000平方メートルが発端となった。土地に進入路がなかったことから、周辺の土地を買い足して公園にする計画に発展したが、周辺の土地も大半がこの地主一族の所有だったため、公社は94~2000年、一族の土地を中心に、山林など計約4万8000平方メートルを約18億円で取得する結果になった。
しかし、計画は頓挫し、土地は塩漬けとなった。市は公社解散に当たり、利息を合わせた土地取得の借金約21億5503万円を肩代わりして返済した。原告は、市が設置した第三者機関「市土地開発公社経営検討委員会」の報告書を根拠に、土地の取得は、所有者の相続税負担軽減や事業救済という個人的な目的を図るためだったと主張している。 関連記事へ