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ジャーナリスト浅野詠子

関西広域)医療観察法病棟計画の中止求め交渉 京都府立洛南病院に精神病患者会 「司法と連携に疑問」訴え

医療観察法病棟計画の中止を求める交渉で府立洛南病院を訪れた精神病患者会の人たち=2023年4月21日、京都府宇治市

医療観察法病棟計画の中止を求める交渉で府立洛南病院を訪れた精神病患者会の人たち=2023年4月21日、京都府宇治市

 人を傷つけた後、刑事責任が問われなかった精神障害者を収容し、強制治療する医療観察法病棟。京都府は宇治市五ケ庄広岡谷の府立洛南病院(精神科)敷地に全国で35番目となる同法専用病棟(17床)を建設する。2026年度にも着工する見通し。京都市伏見区の精神病患者会「前進友の会」は同病棟計画の中止を求め、病院側に対し3度目となる交渉を願い出た。院長の吉岡隆一さんが4月21日、休暇を取り、「一個人として発言」すると断った上で、患者会の3人との話し合いに応じた。

 同法は法案段階で多くの人権問題が指摘されながら施行から18年となり、法案に反対した精神医療従事者らも制度をけん引している。法案成立前の2002年5月、反対する精神科医の集い(代表幹事・岡田靖雄、富田三樹生)で、臨床精神科医73人が反対の署名をした。吉岡さんもその1人。

 医療観察法は法務省と厚生労働省の共管で「司法と医療の連携」が旗印。入院の長期化傾向を疑問視する患者会の問いに対し吉岡さんは「司法と医療はそれぞれ違うものであり、どちらがどちらかに従属するものではないが、双方が双方の邪魔をすることは社会の中で起き得る。例えば刑務所の中に認知症患者や障害者もいるが、司法が医療の邪魔をしている」とした。

 医療観察法の申し立ては検察官が行う。入院処遇は厚労省が担当し、当事者による退院請求が認められるのはまれ。退院してからの通院処遇は法務省保護観察所が担当する。こうした節目ごとに官庁が変わることの問題点は専門家らが指摘している。「ぶつ切りの制度である」との見方を吉岡さんは示した。法は対象者の社会復帰を掲げるが、国はその成果を公表していない。

 患者会は、同法病棟が内省プログラムを重んじることに疑問を呈した。吉岡さんは「心神喪失の状態で起こした行為を振り返えらせることは非常に難しい。疑問に感じる」と語った。

 制度の対象となるのは、他害行為に及んで不起訴や無罪、執行猶予になった精神障害者のうち、精神鑑定の結果などを基に裁判所の処遇決定を受けた人。この日、患者会を支援する男性も同行し「検察の主張や報道をうのみにせず、当事者とよくコミュニケーションを取り、まず事件の実態を把握してほしい」と求めた。

 患者会の江端一起さんは「司法と医療の連携というスローガンが単純にまん延していくことを懸念する」と訴えた。

 京都府医療課によると府立洛南病院は現在、第1期の建て替え工事を行っており、これが終了後の2026年度にも、医療観察法病棟を含む第2期工事に着手するという。

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