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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一

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浅野善一

生活保護「高校生のしおり」作成 奈良県大和高田市、就学費用に対する制度詳しく案内

奈良県大和高田市が生活保護の申請・利用者向けに作成した「高校生のしおり」(右)

奈良県大和高田市が生活保護の申請・利用者向けに作成した「高校生のしおり」(右)

 奈良県大和高田市は、生活保護の申請・利用者向けに「高校生のしおり」を作成した。「生活保護のしおり」から、高校就学を対象とした制度の部分を独立させ、別刷りにした。生活保護の教育扶助は義務教育が対象だが、高校就学の費用も別の扶助の対象になることなどを詳しく説明している。県内では珍しい取り組み。

 生活保護には生活扶助や教育扶助など8種類の扶助があり、高校就学に必要な費用は生業扶助の対象となる。市の「生活保護のしおり」によると、生業扶助は自立のために仕事を始めたり、仕事を習ったりするのに必要な費用を支給する。

 「高校生のしおり」はA4判1枚で、両面を使用。作成は今年5月。表では、支給対象となるものを具体的に案内。受験料や入学金、学生服や教科書などの購入費用、また在学中の学用品や通学の定期券代、クラブ活動の費用などが挙げられている。

 裏では、アルバイトをした場合の収入について、収入申告の義務や収入認定されない使途について案内。修学旅行費用や運転免許など資格の取得経費、大学などの受験料や入学金、就職活動に必要な費用などが挙げられている。これらに使った分は世帯の収入として取り扱われない。

 親だけでなく高校生本人にも見てもらえればという。「生活保護のしおり」の本編はA4判15ページで、こちらも同時に改訂した。

 市保護課は作成の狙いについて「高校に進学しても制度があることを案内する上で、『生活保護のしおり』に細かいことを書き足すと分かりにくくなる。読みやすいものにしたかった」とした。

 従来の「生活保護のしおり」では、高校就学に関する保護の説明の記述は簡易で、詳細は保護課のケースワーカー(市職員)が口頭で説明していたという。「高校生のしおり」があることで漏れなく仕組みを説明できる一方、申請者や利用者にも理解してもらいやすくなると期待している。

 同課によると、市の生活保護利用世帯は12月7日現在、1150世帯。このうち高校生がいる世帯は19世帯、中学生がいる世帯は18世帯。

 市民団体「奈良県の生活保護行政をよくする会」(代表世話人・古川雅朗弁護士)は昨年11月から、福祉事務所を設置する県内14自治体の「生活保護のしおり」の点検と改善申し入れに取り組んでいる。「高校生のしおり」作成は、こうした申し入れや「しおり」の定期的な見直しがきっかけになったという。「よくする会」は改善申し入れの結果報告の中で、積極的な取り組みとして評価している。

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