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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一

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浅野善一

生活保護基準の引き下げ違法 奈良地裁判決、扶助費減額取り消し命じる 大和郡山市などの受給者訴え

判決を受けて拳を上げる原告や支援者の人たち=2023年4月11日、奈良市内

判決を受けて拳を上げる原告や支援者の人たち=2023年4月11日、奈良市内

 奈良、大和郡山2市の生活保護制度利用者5人がそれぞれ市を相手取り、物価下落を理由に行われた2013年の国の生活保護基準引き下げによる生活扶助費の減額について、食料品などの生活必需品の価格は下がっていないとして、減額処分などの取り消しを求めた訴訟の判決言い渡しが4月11日、奈良地裁であった。寺本佳子裁判長は主要な部分で訴えを認め、2市のうち大和郡山市に対し、処分の取り消しを命じた。

 訴えを起こしていたのは、奈良市の2世帯3人(うち1人は裁判中に亡くなった)と大和郡山市1世帯2人。提訴は大和郡山市の原告が2015年、奈良市の原告が2017年。

 訴えによると、大和郡山市の原告は親子で共に障害のため通常の就労が困難といい、2013年7月から生活保護制度を利用。最低生活費の基準額から年金を差し引いた額を受給している。同年8月の生活保護基準の見直しにより、食費や水道光熱費を賄う生活扶助費を、経過措置1年目の段階で月額6万7122円から6万6352円に770円減額された。

 判決は、厚生労働省が基準見直しの主な理由としたデフレ調整について、(1)保護受給世帯の家計でウエートが相対的に高い食料、水道光熱の価格は物価下落の起算点とされた2008年以降、必ずしも下落傾向にあったとはいえず、一方で相対的に低いテレビ、パソコン、カメラなどの教養娯楽は継続的に大きく下落(2)物価は2007~08年の一時的な上昇後に下落―などとして、統計などの客観的な数値との合理的関連性を欠くと指摘した。

 その上で寺本裁判長は同基準の見直しについて「厚生労働大臣の判断には過誤があり、裁量権の範囲を逸脱、乱用したもので生活保護法の規定に違反して違法」とした。

 保護基準見直し前の生活扶助費への増額変更申請に対し、奈良市が行った却下処分の取り消しを求めた同市の原告の訴えは棄却した。

 弁護団は判決後の会見で発表した声明で、判決について「原告らの置かれた厳しい生活実態を真摯(しんし)に受け止め、国が行った生活保護基準引き下げを問題とし、裁量逸脱を認めた、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を具体的に保障する勝訴判決」と評価した。一方、奈良市の原告の訴えを認めなかったことに対しては「基準引き下げ自体が違法というのであれば認めるべきで不当」とした。

 弁護団によると、同様の訴訟が全国29地裁で起こされており、これまでに18地裁で判決が言い渡された。原告の訴えを認める判決は九つ目。 関連記事へ

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