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地域の身近な問題を掘り下げて取材しています

発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一
ジャーナリスト浅野詠子

奈良市、大正期赤れんが顕彰へ 水道事業の歴史刻む建物 修繕始まる

建物の背後に回ると、小さいながら重厚感を醸し出している

建物の背後に回ると、小さいながら重厚感を醸し出している

傷んでいた壁面などが修繕された奈良市水道局旧計量器室=2019年12月13日、奈良市川上町

傷んでいた壁面などが修繕された奈良市水道局旧計量器室=2019年12月13日、奈良市川上町

 奈良市は、大正11(1922)年に建築した同市川上町のれんが建築、旧水道局計量器室の修繕に着手した。赤れんがの貴重な建物はこれまで、手入れされることもなく傷んだ姿を長年さらしており、取り壊される心配も出ていた。その一方で、先人が築いた近代化遺産としての認識が水道事業の担当者らの間に芽生えるようになった。新年には初の案内板がお目見えする。

 建物は平屋建て、床面積は13.39平方メートル。市企業局送配水管理センター(同市奈良阪町)はことし10月から、赤れんがの風合いを生かしながら、傷んだ壁面などにモルタル材を施し、補修している。窓7カ所は新しく入れ替え、門のひび割れなども修理した。

 旧計量器室は、奈良市の上水道が初めて稼動した当時からある建築物だ。建物の正面に「水」の文字のデザインが施されている。大正時代、市は京都府と交渉を重ね、淀川水系木津川の水を分けてもらうことで合意し、わずか16戸で給水をスタートした。計量器室は、奈良阪町の配水池から押上町への送水量を計測していた施設で、室内では、ぜんまい仕掛けの機械が動いていた。「ベンチュリー室」とも呼ばれた。

 近隣には正倉院や東大寺大仏殿があり、市の水道事業の幕開けにより、文化財の防火に安堵(あんど)の声が上がったとのエピソードも残る。旧計量器室がいつの時点で役割を終えたのか不明で、廃止されて数十年といわれる。

 築100年の節目がもうすぐやって来る。修復工事を進める市企業局の担当者は「土木学会関西支部が2017年、土木遺産に選奨したことが、保存への弾みになった。市民が熱心に写真を撮っている姿を見て感激した」と話している。【続報へ】

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