視点)奈良県水道一体化 明らかにされない意思形成過程 市町村老朽水道管の更新計画案
不開示となった2023年作成の各市町村水道管更新10年計画
奈良県域水道一体化計画の主要なメリットとされる、構成26市町村の老朽水道管に対する更新計画案作成の意思形成過程が明らかにされていない。
一体化を巡る事業方針の大枠を了承した3月6日の県広域水道企業団設立準備協議会(会長・山下真知事)は、統合後10年間の老朽水道管更新の各工事計画案を公表した。
しかし公表された計画案は情報量が少ない。市町村ごとに統合予定の2025年から10年間の各年の工事金額が示されているが、水道管の耐震化率がどう上昇するのか、見通しが示されていない。これまで県主導で進んだ一体化協議は、強靱(きょうじん)な水道づくりを掲げるが、地震に最も弱いとされる石綿セメント水道管(7市町村に残存)がいつごろの時点で解消になるのか、そうした記載も計画案にはなかった。
「奈良の声」記者は県情報公開条例に基づき今年1月7日、昨年、数度にわたり開催された一体化協議・施設整備作業部会の関係文書を開示請求し、県水道局は今年3月6日、一部開示を決定した。
閲覧したところ、3月6日の設立準備協議会で公表された水道管更新計画案を作成する過程で、検討・討議されていた事項が含まれていた。しかし、その大部分が黒塗りの不開示だった。
うち昨年9月の施設整備作業部会で会議資料として配布された26市町村水道管の10年間の計画一覧表は大半が不開示だったが、具体的な更新箇所などについて、市町村側から何らかの提示があったことがうかがえるものだった。
これ以外にも同月から12月にかけて開かれた施設整備作業部会で議題となった広域化送配水施設整備計画や宇陀市内小規模浄水場の廃止一覧、施設整備の年度別地域別の10年計画などもあったが不開示だった。
不開示の決定をした県水道局県域水道一体化準備室の見解は次の通り。
「県と市町村における検討または協議に関する情報であって、公にすることにより率直な意見の交換もしくは意思決定の中立性が不当に損なわれる恐れがある」
情報公開を求める声、三宅町や磯城郡企業団からも
一体化の協議が大詰めを迎える中、参加市町村の議会から情報公開を求める声が上がってきた。
三宅町議会は昨年12月の定例会で「県広域水道企業団設立準備協議会(法定協議会)の情報公開を求める意見書」を賛成多数で採択。大和郡山市議会も同月、県に一体化協議の情報公開を働きかけるよう市に求める市民の請願を賛成多数で採択した。磯城郡水道企業団議会は今年2月の定例会で「県広域水道企業団設立準備協議会(法定協議会)の情報公開を求める意見書」を賛成多数で採択した
大和郡山市議会3月定例会建設水道委員会では、採択された請願を巡り市側から「本年1月、水道一体化で市町村長との調整役をしている湯山壮一郎副知事に上田清市長が請願書の内容を手渡した。副知事は『県としてしっかり受け止めている』と述べた」と説明があった。
県法務文書課県政情報公開係は取材に対し「(水道広域企業団協議に関する情報は)条例解釈運用基準に則った判断が行われているはずだが、県域水道一体化計画を司る県水道局に対し、しっかり県民に説明できるよう精査して情報公開制度を運用してほしいと伝えている」と話した。 関連記事へ