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浅野善一

採決で賛成した議員が賠償金負担 奈良県香芝市、出席停止「違法」国賠訴訟判決で求償

奈良県香芝市役所=同市本町、浅野善一撮影

奈良県香芝市役所=同市本町、浅野善一撮影

 奈良県香芝市議会の青木恒子議員(共産)に対する出席停止の懲罰を違法とした判決で裁判上の被告である市が負った損害賠償金について、懲罰に賛成した議員に求償権を行使すべきかどうかを検討していた三橋和史市長は、同議員らに賠償金を連帯して支払うよう2月12日付で請求した。賠償金は同月19日納付された。「奈良の声」の取材で分かった。市は公表していない。懲罰に賛成した議員が自ら求償権の行使を求めていた。

 損害賠償金は約34万円で、昨年9月、市から青木議員に支払われた。福岡憲宏前市長が自身に届いた請求書の一部をフェイスブックで公開している。請求書は請求理由について、青木議員に対する懲罰は国家賠償法が定める公務員による違法な加害行為であるとし、採決で懲罰に賛成した当時の議員と違法な議決を再議(審議のやり直し)に付さなかった当時市長の福岡氏を、求償すべき対象者と結論付けたとしている。地方公共団体の市長、議員は特別職の地方公務員。

 取材に対し、市文書法制課は請求の対象者のうち議員は9人とした。当時の同市議会の議員の数は16人。賠償金は全額を預かった議員が2月19日に持参したという。

 一方、関係者によると、賠償金の負担に当たっては同議員9人で協議し、均等割りにすることにしたという。福岡氏は含めなかった。再議に付さなかったことを理由にそこまで求めるのは酷だと判断したという。

 賠償金の請求を受けた議員の1人、木下充啓議員(自民)は取材に対し「(求償権の行使は)市としては当然やるべきことと思っている。私たちも裁判で負けている以上は真摯(しんし)に受け止めて、謝罪すべきと考えていた」と述べた。木下議員は昨年9月の市議会定例会で、市が青木議員に損害賠償金を支払うため提出した補正予算案の質疑が行われた際、自ら求償権の行使を求める発言をしていた。

 青木議員は「賠償金が税金から払われるのは納得がいかないという思いもあった。判決では議会の裁量権が問題とされたわけだから、議員が負担していくということは、裁判の内容からしても当然かなと理解している」述べた。

 懲罰の発端は、青木議員が議会常任委員会で国民健康保険料や生活保護の窓口への同行の是非を巡って、当時議長だった川田裕議員(無所属)に反論したこと。議会から5回にわたり陳謝の処分を受けたが、いずれも陳謝を拒否。2022年12月、陳謝拒否を理由に出席停止の処分を受けた。大阪高裁は昨年8月の控訴審判決で、一審の奈良地裁の「処分は裁量権の範囲を逸脱し違法」とする判決を維持した。三橋市長は上告しなかった。高裁への控訴は前市長時代。

 国家賠償法は、公務員の違法行為による損害賠償責任を国や地方公共団体に求めている。その一方で「公務員に故意または重大な過失があったときは、国または公共団体は、その公務員に対して求償権を有する」と定めている。

求償先の9議員が判明

(2025年2月27日追加)

 市が賠償金の求償先とした9議員がいずれの議員であるか、関係者への取材で判明した。

 眞鍋亜樹(無所属)、木下充啓(自民)、芦高清友(県議会議員に転身)、中谷一輝(無所属)、上田井良二(公明)、下村佳史(自民)、中山武彦(公明)、小西高吉(無所属)、河杉博之(公明)の9議員(議席順、かっこ内は現所属会派)。

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