奈良県)奈良市生活保護・通院交通費訴訟、原告の橋本さん死去 判決確定を見届け 市は交通費支給の考え
生活保護・通院交通費支給を巡って奈良市を相手取り起こした訴訟の原告橋本重之さんが4月11日未明、死去した。病気療養中だった。83歳だった。市に交通費支給を命じた判決が10日に確定したのを見届けてのことだった。橋本さんの代理人弁護士が12日、明らかにした。市は「奈良の声」の取材に対し、本人が亡くなっても交通費は支給する考えであることを言明した。
奈良地裁の判決は3月27日にあり、橋本さん、市のどちらも控訴しなかった。橋本さんの死去を受けて、古川雅朗弁護士ら代理人弁護士4人は12日、声明文を発表。「最終的な救済が間に合わなかったことは大変残念」とし、市に対し、本人が亡くなっても交通費の支給を実行するよう求めるとともに、行政が通院交通費制度の周知・教示をきちんと行うことを望むとした。
また、橋本さんが判決確定を想定して準備していたコメントも明らかにした。橋本さんは「問題はこれからです。今回のことだけでなく、奈良市がこれからどのように考えてくれるのかということです」「受給者や対象となりうる市民に対応する立場にある人たちが、福祉行政のあるべき姿を目指して取り組みを続けていってほしい」などと述べている。
奈良市保護第一課は、橋本さんの死去は代理人弁護士からの連絡で知ったとし、「交通費を支給することは決まっている。本人が亡くなったため、どのような方法で支給するか検討している」と述べた。
生活保護は国に実施責任があり、費用の4分の3は国が負担する。厚生労働省保護課審査係は「奈良の声」の取材に対し、奈良市から控訴すべきかどうか相談があったとした上で、「判決は厚生労働省の通知や法令に言及していない。市の禁反言の不手際を指摘されたもので、控訴しなければならないものでもない」との考え方を伝えたとした。支給する交通費の全額を市費とすることについては「判決に基づいて支給するものと承知している」とした。