奈良県大和郡山市、知事の「隠した」批判に広報紙で反論 水道保有資金28億円の一般会計移転
一体化に参加予定の市町村のうち大和郡山市など5市の水道経営状況を一覧表にし、「28億円」一般会計移転の正当性を主張する同市広報紙「つながり」
奈良県大和郡山市は15日発行の市民向け広報紙「つながり」で、県が進める県域水道一体化事業を踏まえて実施した、市水道事業の保有資金約28億円(利益による積立金)の一般会計への移転について、市の考え方を示した。
市議会で一般会計への移転が議決されてから約4カ月が過ぎている。掲載の理由について市上下水道部は、荒井正吾知事が先月30日の定例記者会見で、この28億円について「隠した」と批判したことが、新聞などで報じられたことを受けたものとする。同部は「議決を得ており、隠しているという指摘は当たらない」と反論する。
会見の録画が県のホームページで公開されている。それによると、荒井知事は「大和郡山市は資産を隠した。一体化に参加するということは、資産、負債、古い施設を持ってみんなでやろうということで、そうすれば国の交付金もたくさん出る。大和郡山市のしたことはできない相談。その姿勢は、一体化からの離脱宣言と受け止めている」と不満をあらわにした。
すでに市は6月定例市議会で、市上下水道部の上田亮部長が「県水一体化に不参加となった場合は、28億円を再び水道会計に戻す」と明言している。
市は広報紙の2ページ目の全面を使って、「県域水道一体化について」と題する記事を掲載。県が県域水道一体化事業に参加予定の28市町村の資産と負債をすべて企業団(一体化の運営主体)に引き継ぐ方針であることから、水道事業の保有資金と借入金(預金と現金)について、同市と特徴のある4市を比較する一覧表を示した。
2018年度の各市決算を基にしたもので、大和郡山市が保有資金82億円、借入金3000万円であるのに対し、A市は67億円の保有資金があるものの、借入金が153億円と大きい。D市は借入金は30億円に上るが、保有資金は3億円しかない。
これを根拠に「市町村の水道事業の資産には大きな違いある」「本市は保有資金が豊富で借入金がほとんどない」と強調。その上で、市の考え方として、資産は水道事業の財産であるのと同時に「市民の財産である」とし、「持ち寄る資産等に一定のルールを定めて統合すべき」と主張している。
4市はA、B、C、Dの匿名になっているが、A市は奈良市、D市は五條市とみられる。
一方、これまでの「奈良の声」の取材では、大和郡山市民のもう一つの財産は、低廉で良質な地下水を供給する浄水場であるという見方もある。県の計画では、奈良盆地の市町村地下水浄水場はすべて廃止となる。大和郡山市議会では「防災上、多元的に水源を残した方が良いという市民の声もある」と市議が発言した。
巨大ダムに依存した県の一体化計画を巡っては、有権者が賛否を判断する上でのデメリットが示されていない。同市議会では「県水の一体化により市の自己水源(地下水)がなくなり、余剰のダム水が県民に押しつけられる」と指摘した市議もいる。 関連記事へ