西奈良県民センター跡地売却 県と利用の再協議を 住民が奈良市に要望書
要望書を提出する「西奈良県民センター跡地利用を考える会」の川島信彦代表世話人(右)と受け取る向井政彦奈良市副市長=2021年6月23日、奈良市役所
奈良県が今年度、売却を予定している奈良市登美ケ丘2丁目の西奈良県民センター跡地2831平方メートルについて、住民でつくる「同跡地利用を考える会」(川島信彦世話人代表)は23日、仲川げん市長あてに要望書を提出した。奈良市は昨年8月、県からの活用意向を尋ねる照会に対し、「無し」と回答しており、要望書は回答を撤回し、県と再協議するよう求めている。
川島世話人代表ら考える会の5人が市役所を訪れ、向井政彦副市長に要望書を手渡した。要望書は「従前の市の回答を再検討し、あらためて県に協議を申し入れていただくことを要望」と求め、跡地について「当面は空き地として存在しているだけでも災害時の住民の避難場所として役割を果たす」などとしている。
新旧住民の交流などを目的に宅地開発が進む市西部に設置された西奈良県民センターは2016年、老朽化に加え、当初の設置目的も果たしたとして廃止された。県は跡地について、県としての活用予定がないとし、地元の奈良市に活用意向を照会したが、同市からも活用意向無しの回答があったため、売却方針を決めた。
これに対し、考える会は、ことし1月荒井正吾知事あてに3079人の署名を提出したほか、担当の県ファシリティマネジメント室と面談を重ねるなどして、売却中止と跡地への防災を兼ねた公共施設の建設を求めてきたが、県の方針は変わらなかった。
要望書の提出に合わせ設けられた向井副市長との対話の場で、考える会は「跡地は地域にとって大切なかけがえのない場所。県に対し、売却に反対する意思表示をしてほしい」と求めた。
向井副市長は、県からの照会に対し市の担当課に確認したが活用の意向はなかったとし、「市内のそれぞれの地域から要望があり、跡地だけに市が新たに公共施設をつくることは難しい」と答えた。その上で「県の売却の方向性は変わらないという感じがする。住民の希望が反映されるよう、県がどう対応するかだ」との認識を示した。
一方で、向井副市長は都市計画法上の手続きがあることを捉えて、「住民の要望があることを市の意見として県に出すことはできる」とも述べた。跡地は、県立都市計画公園「県立大渕池公園」の計画区域に含まれており、県は売却に向け、同計画区域から跡地を除外する手続きを行う。除外に当たって、県は県都市計画審議会に諮らなければならず、その際、市の意見を聴いて審議会に提出する。 関連記事へ