香芝市公共施設、敷地内禁煙後退の可能性 議会が屋外分煙施設求める決議 3分の1は反対
奈良県香芝市役所の入り口に掲げられた敷地内禁煙の表示=2022年2月11日、同市本町
奈良県香芝市が受動喫煙防止を目的に2018年から実施してきた市役所など市公共施設の敷地内禁煙が後退する可能性が出てきた。市議会が昨年12月、市施設への屋外分煙施設設置を市に求める決議を可決したためだ。議員の3分の1は反対した。
設置反対の市民が請願書提出へ
決議に対しては分煙施設設置に反対する市民の動きもあり、「喫煙所新設に反対する市民の声」(代表者・曽根秀一、15人)は2月14日、市議会に対し、市の公共施設敷地内に喫煙所の新設を行わないよう求める請願書を提出する。
市がホームページで公開している情報などによると、市公共施設の敷地内禁煙は、2018年4月の市受動喫煙防止条例施行と同時に実施された。市はそれまで公共施設に設置していた職員、市民向けの喫煙所を撤去した。同条例は議会発議によるもので、当時、同市議だった福岡憲宏市長が提案、全会一致で可決された。
条例に敷地内禁煙の規定はないが「市の責務」が定められていて、市に対し、市が設置、管理する施設について「受動喫煙による市民の健康への悪影響が生じないよう適切な措置を講じなければならない」と課している。
決議があったのは12月17日の市議会12月定例会本会議。市のホームページで録画を見ることができる。眞鍋亜樹議員(無所属)が「健康増進法の適正な運用と更なる増進を求める決議」として提案した。受動喫煙防止について「市の責務」を定めた同条例などを根拠に、市施設への屋外分煙施設整備に向け、速やかに予算措置などを講ずるよう求める内容。
眞鍋議員は敷地内禁煙について、3年半を経て定着したが敷地を一歩出た場所での喫煙が見受けられ、通行者の受動喫煙を招いているなどと提案理由を説明した。健康増進法の一部改正で病院や学校、行政機関などは2019年7月から原則敷地内禁煙となったが、屋外において受動喫煙防止措置が取られた「特定屋外喫煙場所」の設置は可能。
決議案に対し、質疑、討論が行われ、賛成の立場からは「敷地外であればどこでもいいということから喫煙場所を指定する形に変わる。たばこを吸う方の権利も含めて受動喫煙を防止していこうということ」(河杉博之議員〈公明〉)などの意見があった。
一方、反対の立場からは「社会で禁煙が進む中、目標となる市において屋外分煙施設をつくるのはどうなのか。子供の教育においても、いかに喫煙による健康被害があるか健康教育が行われている」(青木恒子議員〈共産〉)などの意見があった。
裁決の結果、決議は賛成10、反対5で原案通り可決された。
「喫煙所新設に反対する市民の声」は請願の理由を「受動喫煙防止の取り組みは喫煙をさせない環境をつくること」などとする。
眞鍋議員が健康増進法で病院や学校、行政機関などに特定屋外喫煙場所を設置することは可能としたことに対し、「市民の声」の関係者の一人は、厚生労働省が「健康増進法の一部を改正する法律」の施行について2019年2月22日付で都道府県知事などにあてた通知が「敷地内禁煙が原則であり、特定屋外喫煙場所を推奨するものではないことに十分留意すること」としている点を挙げて、制度の誤った運用だと批判する。
市が2012年に策定した「健康かしば21~第2次市健康増進計画」は、喫煙と受動喫煙を一体の問題として取り上げており、数値目標を掲げて「喫煙者の割合を減らす」とうたっている。
県疾病対策課の県内市町村庁舎の禁煙実施状況調査によると、健康増進法の一部改正に伴って敷地内禁煙は大幅に増えている。全39市町村のうち施行前の2019年4月1日現在で本庁舎、議会棟共に敷地内禁煙を実施していたのは香芝市を含む5市町にとどまっていたが、施行後の2020年4月1日現在では、特定屋外喫煙場所を設置せず敷地内を禁煙とする市町村は16になった。
一方、特定屋外喫煙場所を設置して敷地内禁煙から分煙へと後退したのは平群町だけだった。
県内市町村で最も早く本庁舎、議会棟の敷地内禁煙を実施したのは王寺町(2012年)。次は平群町(2016年)で3番目が香芝市だった。 続報へ