個人情報開示請求に対する決定期限、倍の30日に 奈良県内自治体の半数近く 改正保護法の適用で 情報公開にも波及
県内自治体の個人情報開示請求書(左)と公文書開示請求書
改正個人情報保護法が4月から地方公共団体にも適用されるようになったことに伴い、奈良県内自治体の半数近くで個人情報の開示請求に対する開示決定の期限がこれまでの倍の30日になった。「奈良の声」の調べで分かった。この変化は情報公開にも波及、これら自治体の一部では行政文書の開示決定の期限が30日に改められた。こうした自治体では、決定の長期化を招かないよう努めることが課題になった。
改正個人情報保護法は、官民を通じた個人情報の保護と活用の強化などを狙いとして個人情報保護法、行政機関個人情報保護法、独立行政法人個人情報保護法の三つを統合したもので、2022年4月から一部が施行されていた。
地方公共団体はそれぞれで設けていた個人情報保護条例を廃止し、代わって、開示手続きなど法の執行に必要な事項を個人情報保護法施行条例として定めた。条例の規定は法の範囲内で独自に決めることができ、開示決定の期限については、法は「開示請求があった日から30日以内」と定めているが、これより短い期限を設定することも可能とされた。行政機関などを対象にした国の「個人情報保護法についての事務対応ガイド」に示されている。
「奈良の声」は、県と県内市町村を合わせた40自治体にどう対応したか取材した。
個人情報 | 情報公開 | 個人情報 | 情報公開 | ||
---|---|---|---|---|---|
県 | ● | 田原本町 | |||
奈良市 | 曽爾村 | ● | |||
大和高田市 | ● | ● | 御杖村 | ||
大和郡山市 | 高取町 | 法適用前から30日 | |||
天理市 | 明日香村 | 法適用前から30日 | |||
橿原市 | 上牧町 | ● | |||
桜井市 | ● | ● | 王寺町 | ||
五條市 | ● | 広陵町 | |||
御所市 | ● | 河合町 | |||
生駒市 | 吉野町 | ● | |||
香芝市 | 大淀町 | ● | |||
葛城市 | 下市町 | 法適用前から30日 | |||
宇陀市 | ● | 黒滝村 | ● | ● | |
山添村 | ● | 天川村 | ● | ||
平群町 | 野迫川村 | ● | |||
三郷町 | 十津川村 | ● | |||
斑鳩町 | ● | 下北山村 | ● | ||
安堵町 | ● | 上北山村 | 法適用前から30日 | ||
川西町 | ● | 川上村 | 法適用前から30日 | ||
三宅町 | 東吉野村 |
法適用前は、県や奈良市など35自治体が開示決定の期限を「15日以内」と設定していた。このうち、奈良市など16自治体は独自に期限を設定し、法適用後もこれまでの期限を維持した。一方、県や大和高田市など19自治体は独自の期限を設定せず、法が定める「30日以内」に従った。
さらにこの19自治体のうち大和高田市、桜井市、黒滝村の3自治体は、情報公開条例による行政文書の開示請求に対する開示決定の期限についても、改正個人情報保護法と法的には関連していないものの、個人情報の期限に合わせる形で「30日以内」に改めた。これまで40自治体いずれの情報公開条例も開示決定の期限は「15日以内」だった。
高取町など5自治体の個人情報の開示決定の期限は法適用前から「30日以内」だった。
期限設定の判断分かれる
個人情報 | 情報公開 | 自治体数 |
---|---|---|
15日を維持 | 15日を維持 | 16 |
法に従い30日に | 15日を維持 | 16 |
個人情報に合わせ30日に | 3 | |
法適用前から30日 | 15日を維持 | 5 |
この結果、開示決定の期限の設定に当たって自治体の判断はいくつかに分かれた。個人情報と情報公開のいずれも「15日以内」となったのは16自治体、個人情報は「30日以内」、情報公開は「15日以内」となったのは21自治体、個人情報と情報公開のいずれも「30日以内」となったのは3自治体だった。
「おおむね15日以内で対応できていた」
法適用前の期限を維持した自治体は理由について次のように説明した。奈良市総務課は「これまでも個人情報の開示決定はおおむね15日で対応できていた。法律に合わせるまでもないと考えた」と述べた。三宅町総務課は「サービスの質を落とさないようにと考えた」と述べた。
これに対し、法が定める期限に従った自治体は次のように説明した。県法務文書課は、開示決定の期限の延長期間の日数を問題点として挙げた。期限を法より短い「15日以内」にしても、延長期間は法が定める「30日以内」より長くできない。このため開示決定の期限は延長を含め最大で45日。法適用前の県情報公開条例では、延長期間を45日と設定していたため期限は最大で60日あったという。
原則 | 延長 | 合計 | ||
---|---|---|---|---|
法適用前 | 個人情報 | 15日 | 45日 | 60日 |
30日 | 30日 | |||
情報公開 | 15日 | 45日 | 60日 | |
法適用後 | 個人情報 | 15日 | 30日 | 45日 |
30日 | 60日 | |||
情報公開 | 15日 | 45日 | 60日 | |
30日 | 30日 | |||
十津川村情報公開条例の延長期間は4週間 |
その上で同課は「個人情報で開示請求が多いのは病院のカルテ。30日後でなくても開示決定できる。速やかに開示決定すればよい」と述べた。
大和高田市法務課は「制度の基本的運用が国の定めと変わらないようにと考えた。延長期間を含めた開示決定の期限は最大で60日で、法の適用前と変わっていない。実質的な権利侵害はない」と述べた。
情報公開の開示決定の期限も「30日以内」に改めた点について同課は「個人情報とそろえないと、市民が混乱し誤解が生じる」とした。その上で「これまで15日でできていたものが、それ以上かかるようになるわけではない」と述べた。一方で「プライバシーに関わる部分が多い場合、開示すべきかどうかで検討に時間がかかることもある」とも述べた。 関連記事へ