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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一

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浅野善一

奈良県天理市長、柳本飛行場跡フィールドワークに参加 「強制連行」記述巡る説明板撤去で 再設置求める団体が案内

柳本飛行場跡のフィールドワークに参加した並河健天理市長(右から2人目)。左は案内役を務めた高野真幸さん=2023年8月8日、同市内

柳本飛行場跡のフィールドワークに参加した並河健天理市長(右から2人目)。左は案内役を務めた高野真幸さん=2023年8月8日、同市内

 奈良県天理市の並河健市長は8月8日、太平洋戦争末期に建設された市内の大和海軍航空隊大和基地(通称・柳本飛行場)の跡地を歩くフィールドワークに参加した。市民団体「天理・柳本飛行場跡の説明板撤去について考える会」が案内した。

 飛行場跡の一角には、過去の市長の時代に市などが設置した飛行場の説明板があったが、並河市長は2014年、建設工事に関し朝鮮人の強制連行などの記述があることを問題視して撤去。「考える会」は説明板の再設置を求めて市と交渉を続けている。市長の姿勢は変わっていないが、「考える会」は「一歩前進」と受け止めた。

 同飛行場は本土決戦に備えて建設されたといわれる。同市長柄町や岸田町の付近に、長さ1500メートルの滑走路や関連施設があった。現在は元の水田などに戻っている。

 フィールドワークには、並河市長や市教育長、市教育委員会文化財課の職員、「考える会」の関係者ら約20人が参加した。水田地帯に点在する滑走路のコンクリート舗装の一部や通信に使われたコンクリート製の防空壕(ごう)、海軍施設部跡の建物などを、「考える会」共同代表の一人、高野真幸さんの案内で約2時間かけて巡った。高野さんは強制連行や慰安所についても言及した。並河市長は時折、質問もしながら説明に耳を傾けていた。

 並河市長はフィールドワーク終了後のあいさつで「飛行場の全体像を教わり、平和を次の世代に受け継いでいかないといけないという思いを新たにした。朝鮮半島から来られた皆さんにも本来、故郷で平穏な日常がなければならなかった。われわれ日本人は真摯(しんし)に受け止め反省し、決して繰り返されてはならない」と述べた。

 その上で強制連行などの歴史認識については「いろいろな研究家もおられ、(考える会)の皆さんの成果も勉強させていただきたい。今日のフィールドワークはその一環としてあったと思う」とした。史跡としての保存についても触れ、「壕なども劣化しており、どうしたら残していけるのか予算面も含め検討していかなければならない」と述べた。

 高野さんは取材に対し、「一歩前進と思う。市長には1回だけでなくフィールドワークを続けてほしい。付随する施設はたくさんある」と述べた。

 同飛行場を巡っては、その歴史の解明に取り組むグループが、強制連行された朝鮮人労働者が建設工事に動員されたことや、朝鮮人女性の慰安所があったことを、独自に掘り起こした。説明板は1995年、そうした調査を踏まえて設置された。しかし、2014年、「強制連行」や「慰安所」の記述に対し、外部から批判的な指摘があり、市はこれを機に「強制性については議論があり、説明板を設置しておくと、市の公式見解と誤解される」と判断、撤去した。 関連記事へ

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