関東大震災100年、朝鮮人ら虐殺事件を考える 8月26日、奈良天理で討論会
討論会「関東大震災から100年~現代の課題を考える」の案内ちらし
討論会「関東大震災から100年~現代の課題を考える」(同実行委員会主催)が8月26日午後2時から、奈良県天理市川原城町の市民会館で開かれる。震災の混乱の中、流言飛語によって多くの朝鮮人や中国人が虐殺された事件について、なぜ起きたのかを検証し、現代に投げ掛ける問題を考える。震災直後、当時の奈良県知事が県報で流言に言及するなど、県も無縁ではないという。
1923年9月1日に起こった関東大震災は首都圏に死者10万人の被害をもたらした。同実行委事務局は虐殺事件について「内務省警保局が『朝鮮人が爆弾を所持、石油で放火するものあり』と公文書で流すなどして流言飛語が広まり、官憲や自警団に加わった民衆が恐怖に駆られ、朝鮮人6000人、中国人800人、社会主義者、労働運動の活動家、朝鮮人に間違われた日本人を殺害した。最近の研究で琉球人の犠牲者の名前も分かってきた」とする。
国の中央防災会議が2009年3月にまとめた「災害教訓の継承に関する専門調査会報告書」の「1923 関東大震災【第2編】」も、「朝鮮人が武装蜂起し、あるいは放火するといった流言を背景に、住民の自警団や軍隊、警察の一部による殺傷事件が生じた」と指摘。「朝鮮人が最も多かったが、中国人、内地人も少なからず被害にあった。犠牲者の正確な数は掴(つか)めないが、震災による死者数の1~数パーセントにあたり」などと述べている。
同実行委事務局によると、奈良県では震災直後の9月18日、当時の成毛基雄知事が奈良県報号外で「今度の震災に当り多くの朝鮮人は能(よ)く同情し又救済等に努力しつゝあるが、極めて少数の鮮人は災難に乗じて悪い事を働いたそうである」などと流言を疑うことなく述べたという。同事務局は、奈良県も事件と無縁ではないとする。
当日は4人のパネリストによる発表と討論が行われる。パネリストとそれぞれの発表内容は、松田暢裕さん(小説「智異山」翻訳者)「千葉県の虐殺事件、八千代市観音寺のこと」▽崎浜盛喜さん(「琉球人遺骨返還を求める奈良県会議」共同代表)「琉球人虐殺について」▽姜信子(カン・シンジャ)さん(作家)「鎮魂と予祝~百年芸能祭に取り組んで」▽浅川肇さん(ハッキョ支援ネットワーク・なら)「関東大震災の時代状況と現代の課題を考える」。
このほか、関東大震災100年をテーマにしたテレビニュース番組の放映や、虐殺事件を扱った詩人壷井繁治の詩「十五円五十銭」を基にした渡部八太夫さんの祭文語りがある。
同実行委事務局は「関東大震災の朝鮮人虐殺の背景には、官憲に植民地支配からの独立運動に立ち上がった朝鮮民族に対する恐怖があったと言われる。100年後の今、ロシアのウクライナ侵略から岸田政権は安保関連3文書を閣議決定し、敵地基地攻撃能力を有した長距離ミサイル配備で、沖縄―南西諸島の前線基地化を図るっている。こうした他民族、国家に向けた敵愾(てきがい)心が増す今、なぜ惨劇が起きたのか、歴史を検証し、現代に投げ掛けられた課題を明らかにするため、参加者と共に議論したい」と話している。
参加者には資料代として500円のカンパの協力を求める。当日、市民会館の駐車場は利用できない。事務局は天理駅前の駐車場を利用してほしいとしている。
問い合わせは事務局の川瀬さん、電話090-8234-0077、電子メールkawase2018@yahoo.co.jp