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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一

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ジャーナリスト浅野詠子

市町村の石綿セメント管残存67キロ 県域水道一体化の企業団が相当量引き継ぎ 耐震化に課題

石綿セメント管を除去する橿原市の耐震化工事=2016年9月6日(市提供)

石綿セメント管を除去する橿原市の耐震化工事=2016年9月6日(市提供、画像の一部を加工しています)

 奈良県内市町村の水道事業が抱える老朽化水道管のうち、最も耐震性が低いとされ、交換が急がれる石綿セメント管が67キロほど残存していることが、記者が県に開示請求した水道調査(2020年3月末現在、簡易水道を除く)から分かった。このうちかなりの延長が、県と27市町村が2025年に開業を目指す県域水道一体化の企業団に引き継がれる見通しだ。

最長は御所市25キロ

 残存する石綿セメント管は、県内市町村水道の管路総延長の1%程度だが、破損率が高く、耐震化や漏水防止のために解消が急がれる。

 県が主張する県域水道一体化の最大級の効果は、強靱(きょうじん)で安全な水道態勢にある。一方、県水道局一体化準備室は「企業団設立後、残存石綿管をなくすための費用試算はまだ行っていない」と話す。

 石綿セメント管の総延長が最も長いのは御所市で25キロに及ぶ。同市水道局によると、配水池と各家庭をつなぐ管路が大部分で20キロある。これが一体化の企業団に引き継がれる見通しだ。

 市は、残像石綿管のうち基幹管路の大きいものから優先に解消し、耐震化を進めている。しかし、同じような課題を抱える他の市町村同様、予算の制約や地理的条件などから一気には進まない。

 同市は戦後の高度経済成長期、口径が10センチ台の小規模水道管を採用する際、経済性の高かった石綿セメント管を積極的に採用してきた。人口の減少が進み、市の水道経営は日々、厳しさを増し本来、施設更新などに充てる内部留保の積立金は少ない。

 市水道局の担当者は「今後、もっと料金を値上げしなければやっていかれないという矢先に、一体化の計画は希望の光、救いの道」と話す。

 隣市の大和高田市水道事業は、石綿セメント管が8.8キロ残存する。県内では御所市に次ぐ長さだ。この4年間で4キロ減らした。市水道局は「交換は耐震性に優れた鋳鉄管を採用している。工事中は、断水することができないので仮設管を設けるなど大掛かりになっている」と話す。

 高取町は残る約2キロの石綿管の解消を目指し、交換は耐震性に優れる水道配水用ポリエチレン管に更新している。石綿管は耐震性が弱いだけでなく、酸性の強い土壌や地下水の影響を受けると経年劣化が早くなり、強度が低下して漏水の原因になるとして重く受けとめている。

 桜井市営水道の石綿セメント管は残り3.7キロ。「防災上、早期に減らしたいが、市内管路全体の耐震化となると膨大な予算と歳月が掛かる」とみる。

 大和郡山市の残存石綿管は1.8キロ。市は一体化による資産持ち寄りが不満で参加を留保しているが、水道管全体の耐震化率は低く、改善は市政の課題。水道工事の担当者によると、ある地域において、口径10センチの石綿セメント管延長約176メートルを、耐震性に優れる鋳鉄製に交換する工事だけで1600万円ほどの費用が掛かった。

 市部では奈良市、生駒市、天理市に石綿セメントの水道管はない。

 これら3市を含む一体化参加予定市町村の水道料金、保有資産などを比較した場合、経営の安定度は「北高南低」の傾向にある。一体化の計画は、地下水・ため池浄水場などの市町村自己水を積極的に廃止するだけでなく、地元議員らの関与の縮小、水道自治の後退などを招く可能性もある。 関連記事へ

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