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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一

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ジャーナリスト浅野詠子

視点)本当か? 能登地震断水「県営水道普及している所、復旧早い」 奈良県大和郡山市、一体化巡る議員発言

県域水道一体化について議論した大和郡山市議会建設水道委員会=2024年3月7日、同市役所

県域水道一体化について議論した大和郡山市議会建設水道委員会=2024年3月7日、同市役所

 3月7日の奈良県大和郡山市議会定例会の建設水道委員会で、ベテラン議員の東川勇夫委員が県域水道一体化に関連して、能登半島地震の断水を取り上げ「県営水道が普及している所が早く復旧する傾向にある」と述べた。本当にそうなのか。石川県に聞いてみた。

 東川委員によると、県営水道を約6割受水する石川県七尾市の水道の復旧が、自己水100%で浄水場を営む輪島市などと比べると早かったという。

 一体化構想推進の前段として奈良県はこれまで、市町村に対し、自己水源の直営浄水場を廃止し、県営水道を受水するよう指導してきた。浄水場の廃止はすでに10以上の市町村で実現している。

石川県「県営水道と自己水、どちらも大事」

 被害が大きかった奥能登は長年にわたり、地下水や河川の表流水などの自己水を水源として浄水場を営むエリアが多いという。今後、県営水道に切り替えないと、防災上、不利なことになるのか、石川県に聞いた。

【同県環境政策課・水環境グループの話】

 「県営水道は七尾市に送る送水管の損傷などで復旧するまで2カ月かかった。また、自己水が100%の志賀町、穴水町の水道の復旧が一番早かった。こうしたことから県水をたくさん受水する方が断水時の復旧に有利であるとは一概に言えない。県水が来ていない市町村も頑張っている。多様な水源の観点から、県営水道も市町村の自己水もどちらも大事」

大和郡山市発の地下水浄水場の課題

 大和郡山市が一体化に参加する場合、2026年度で市営の北郡山浄水場(水源・地下水)を廃止することが条件とされており、市はこれを受け入れている。

 一方、防災上の理由から同浄水場の存続を求める議員が複数いる。東川委員は3月7日の建設水道委で、廃止を擁護する立場から次のように述べた。

 「地下水は電気ポンプでくみ上げるが、停電したら動かず、北郡山浄水場には非常用の自家発電設備もない。また、モーターの故障によって動いていない井戸が3カ所ある。現在、稼働している5カ所から浄水場までの管路の総延長は5キロあり、地震で破損したら大変なことになる。北郡山浄水場の災害リスクは少ないという主張があるが、にわかに賛成できない」。

 渇水と防災に強い地下水浄水場の存続と充実を図るとともに、ルールなき県域水道一体化に参加しないよう求めた請願を大和郡山市議会が全会一致で採択したのは2021年3月のことだった。このときの議長が東川委員だ。

 当時、県は奈良盆地の地下水浄水場をすべて廃止する予定だったが、その後、奈良市の協議離脱により、布目ダムの水を同市緑ケ丘浄水場から生駒市に送水する計画を改め、方向を転換。生駒市の真弓浄水場と大和郡山市の昭和浄水場を残すことを決めた。流れは変わった。

 さらに天理市と生駒市の要望を受け、いずれも水源が地下水の杣之内浄水場と山崎浄水場についても基本計画の廃止時期を特定せず「2048年度以降」とぼかすことを認めた。一体化の企業団はダムを水源とする主力の県営2浄水場に加え、4カ所の地下水浄水場を相当な長期間にわたり使用することになる。

 東川委員の発言は、一体化推進の立場を明確にし、参加に強い意欲を示す上田清市長への援護射撃に違いない。市議会では賛否が拮抗し、あす3月14、15日の一般質問では議員5人が一体化について取り上げる。 関連記事へ

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