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ジャーナリスト浅野詠子

奈良県平群町メガソーラー訴訟 地裁で住民意見陳述 「自治会の96%世帯反対」と訴え

裁判では傍聴券を求めて80人近くの平群町民が集まり、口頭弁論後に行われた住民集会に参加した=2024年5月30日、奈良市登大路町

裁判では傍聴券を求めて80人近くの平群町民が集まり、口頭弁論後に行われた住民集会に参加した=2024年5月30日、奈良市登大路町

 奈良県平群町内の大規模太陽光発電(メガソーラー)計画に反対する地元住民が県の許可の取り消しを求めた訴訟の第3回口頭弁論が5月30日、奈良地裁(和田健裁判長)であり、原告住民による意見陳述などが行われた。

 意見陳述で住民側は、椿台自治会(約475世帯)が2021年度に実施したアンケート(回収率75%)で「メガソーラー反対」と回答した世帯は96.3%に上っていたと主張した。

 さらに、業者側が申請をやり直し昨年2月、県が開発を許可し、工事が再開されたことについて、「昨年9月の大雨で家の前の側溝はあふれ、道路が川のようになっているのを見た。(ソーラー計画地の)樹木は皆伐されたとはいえ、土中に水は浸み込むが、今後、5万2000枚ものパネルが張られると、土に浸み込むことのできない水がそのまま流れてくるとどうなるのか」と訴えた。

林地開発許可の執行停止申し立て却下

 口頭弁論終了後に地裁近くの会場で開かれた原告住民の集会では、地裁が今年3月28日、住民側が求めていた県の林地開発許可執行停止の申し立てを却下(寺本佳子裁判長当時)したことが報告された。須藤啓二・平群町議は「地裁の判断は、調整池などの設置により、降雨後10時間までの安全が確保されるとのことだが、私たちは降雨後10時間以降に調整池があふれる危険性を問題にしていた。認められず残念だが、県は住民を守ってほしい」と述べた。

 住民が業者を相手取り起こした工事差し止め訴訟も地裁で進行中。2訴訟を支援する佐藤真理弁護士は「裁判所による現場検証は10月ごろ行われる予定。現在、計画地には住民は立ち入ることができないが、メディアも同行を許可してもらえるよう裁判所に要請してほしい」と報道陣に呼び掛けた。

 同計画を巡っては、2021年2月から、計画地48ヘクタールの森林皆伐が始まり、2カ月後、業者側が県に届け出ていた防災上の数値が誤っていることを住民側が突き止め、通報を受けた県が工事の停止を命じていた。

 県森林環境課は5月29日、「奈良の声」の取材に対し「安全対策の誤りが発覚した当時は、応急防災対策として5年に1度の降雨確率の対策を指導したが、2022年夏から30年に1度の確率で発生する大雨に対応するよう指導し、仮調整池が2022年12月から2023年1月にかけて造成され、再許可をした」と話した。

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