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浅野善一

情報公開、議員からの請求を区別 奈良県香芝市、開示・不開示決定の決裁区分を市長に引き上げ

上から事務決裁規程の改正を伝える奈良県香芝市の文書、市役所、2024年12月の市議会定例会本会議=浅野善一撮影

事務決裁規程の改正を伝える奈良県香芝市の文書(上、部分)、市役所(左下)、2024年12月の市議会定例会本会議=浅野善一撮影

 奈良県香芝市は、市情報公開条例に基づく開示請求のうち、市議会議員からの請求をそのほかの請求と区別し、開示・不開示などの決定の決裁区分を市長に引き上げた。市は市事務決裁規程を改正し、12月13日に施行した。これまでの規程では、請求者が誰であっても決裁責任者は部長または局長だった。改正内容は市ホームページの公示集で公開されている。

 市事務決裁規程は「市長権限に属する事務についての決裁区分および手続きを定め」たもので、市長が決裁する事項や、副市長、部局長などが「市長の名のもとに常時市長に代わって決裁する」専決事項を具体的に列記している。市長の決裁事項については「市の事務のうち、重要な事項、異議または疑義のある事項および新規な事項は、すべて市長の決裁を経なければならない」と定めている。

 中村良路議長は「奈良の声」の取材に対し、一議員の意見として「議員同士のいざこざに関わる開示請求があることへの対応ではないか」との見方を示した上で、「開示請求への対応は公平公正が求められるので、従来の規程でよいのではないか」との見解を述べた。

 市企画政策課は規程改正の理由について、「奈良の声」に対し次のように説明した。

 市は今回の規程改正で、市議会基本条例に基づく議員からの資料請求と閉会期間中の文書による質問に対する、資料提供や回答についても、決裁責任者を市長とすることを明記した。これまでは、同条例に「市長等は、速やかに資料の提供を行う」などの記述があるのみだった。過去に一部の資料提供や回答が部の判断だけで行われ、市長が知らないこともあったという。

 市企画政策課は「情報公開条例に基づく議員からの開示請求は、議会基本条例に基づく議員からの資料請求などと同じかまたはそれに近いものであり、同じレベル(市長を決裁責任者とする)で対応することにした」と述べた。

 市情報公開条例の目的は「市政に関する情報の一層の公開」や「市の諸活動を住民に説明する責務が全うされるようにする」こととされ、「何人も、行政文書の開示を請求することができる」。開示請求権の行使に当たって請求者が議員であるか否かの区別はない。一方、市議会基本条例に基づく資料請求や文書質問は、議会機能の強化を目的として議員を対象に認められている。

 市企画政策課長は「規程の改正は内部的な手続きに関する市の裁量の範囲内でのことであり、開示・不開示の判断は条例の規定に基づいて行われる。これまでも開示請求の内容によっては市長に報告することもあった」と述べた。地方自治法では、条例の制定や改廃は議会の議決が必要だが、規程の制定や改正については不要。

 中村議長は「規程の改正について詳しいことをあらためて市長に聞きたいと思う」と述べた。

 市議会基本条例を巡っては、現行では文書質問の回数に制限がないことについて、閉会中、議員1人1回1問とする改正案を、三橋和史市長がこの12月定例会に提出した。回答文書の作成が職員の大きな負担になっているという理由だった。審査を付託された12月10日の総務建設委員会は、委員から異論が出たことを受けて継続審議を決めたが、三橋市長は16日の定例会最終日に改正案を撤回した。

 中村議長が述べた「議員同士のいざこざ」に関連する問題としては、市が議会基本条例改正案の提出に当たって実施した職員アンケートで「他議員を批判するための資料とするためと思われる文書質問等も含まれ、対応に苦慮している」との意見が複数の職員からあった。アンケート結果「香芝市議会基本条例第16条に基づく『文書による質問』に関する対応状況調べ」は市ホームページで公開されている。

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