市議などからの「働き掛け」記録し公表 奈良県香芝市「不当要求を防止」
市議などからの要望などを記録する奈良県香芝市の働き掛け記録票(市ホームページから)
市民の相談に議員同席、一律拒否は見直しへ
奈良県香芝市と市教育委員会は、市議会議員などから職員への要望などの「働き掛け」を記録し、定期的に公表する制度を市の規則として定め、8月13日発表した。三橋和史市長は「市政の透明化を図り、不当要求を防止する」としている。一方で規則の制定と併せ、市民の相談に議員が同席することについては一律拒否の運用を見直す。
規則の正式な名称は「香芝市職員の職務に関する要望等の記録等に関する規則」で、公布は7月29日、施行は8月1日。市教委も同様の規則を定め、施行した。
市によると、同市ではこれまで職員が議員などから職務に関する要望などを受けた場合に、記録を作成するかどうかや記録する際の方法、情報共有の在り方について職員間で統一がされていなかったという。
一方で、過去に職員が議員などから不当な要求を受けている可能性がある場合が見受けられたことから、今年6月に市長に就任した三橋市長はこれに対処するための具体的な措置が必要と判断したという。
同規則によると「働き掛け」とは要望やこれに類する行為で、市議会議員だけでなく国会議員や都道府県議会議員、他の市区町村議会議員、これらの秘書から行われたものも該当する。また、議員以外の市役所外部からの要望などで「職員の中止の求めにもかかわらず、長時間繰り返しまたは威圧的な言動を伴ってなされたもの」も該当する。
「働き掛け」を受けたときは原則として複数の職員で対応、やりとりを録音するとともに記録票を作成し、市長に報告する。市は「働き掛け」の件数と概要を定期的に公表する。個人情報保護法が規定する不開示情報は公表しないが、議員名は公表する。市総務課によると、奈良市が同様の制度を取り入れており、参考にした。議会への説明では「良いこと」との応答があったという。
市民の相談に市議が同席することについては「一律に拒否している運用を適切に見直す」という。市総務課はどのような場合が該当するのか明確になっているわけではないとする一方、「これまでもすべてを拒否してきたわけではないが、市民のための議員の純粋な活動まで阻害していないかとの観点から、絶対に同席はいけないという運用は改めていく」とした。
同市では、市民の生活保護申請時の議員の同席の是非を巡って議論がある。市議会の共産党議員や生活保護の問題に取り組む市民団体が同席を認めるよう求めているが、市は拒否してきた。市民団体の調査によると、県や県内市町村が設置する15福祉事務所のうち、議員の同席を認めていないのは香芝市だけという。
三橋市長は規則制定の発表後、SNS「X」に「市政の透明性を図るとともに、職員への不当要求を防止するためにも議員等の公職者から要望、要請、意見、苦情や依頼などの働き掛けを受けたときに、記録を作成して市民の皆さまに公表する取り組みを始めました」と投稿した。
三橋市長は初登庁の日の職員訓示で市と議会の関係に触れ「特定の議員のみに重きを置いたり、特定の議員を軽んじたりすることのないよう」にと述べたほか、議会とは適切な距離を保つ必要があるとの考えも表明している。
議決が不要な要綱も制定したら公表
三橋市長の下で市政の透明化に取り組む香芝市は、要綱や要領の制定について定義から審査、公表までを明文化した「規程」を定めた。要綱の制定は条例と違って議決が不要なため、これまでは公表の機会がないものもあった。今後は公表が原則となった。
「規程」の正式な名称は「香芝市要綱及び要領等の制定等に関する規程」で、施行は7月11日。
同市では、前市長時代にいずれも市長の諮問機関として公有財産有効活用検討会議(6月19日廃止)と市政運営検証会議(4月1日廃止)が要綱の制定のみで設置された。
どちらも川田裕議長の提案によるもので、特定の議員が委員として参加、川田議長が会長に就任していたが、会議の設置に関する情報は市民だけでなく委員ではない議員にも伝わっていなかった。公有財産有効活用検討会議では統廃合を伴う小学校再編や公立幼稚園・保育所再編の基本方針が検討され、それらが議会に提案され、可決された。
同規程の定義によると要綱は、補助金、給付金などの交付▽指導、勧告、助言などの行政指導の基準▽条例や規則の解釈基準▽庁内会議の設置―などに関することを定める。要領は、要綱の施行または市の事務事業の執行に関する手続などを定める。
要綱を制定または改廃するときは、事前に原案を法制執務の指導を所管する総務課に提出し、審査を受ける。公表場所は市ホームページの公示集の欄と市役所正門の掲示板。
市総務課は「要綱の定義や書式、審査などはこれまでと変わっていない。ルールを徹底させるため明文化した」とする。公表についても「この3年ほどは実施している」としたが、公有財産有効活用検討会議と市政運営検証会議の設置要綱は公表されなかった。