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浅野善一

生活保護申請時の議員同席認める 奈良県香芝市、前市長時代までの拒否から転換

奈良県香芝市役所=2024年6月26日、同市本町

奈良県香芝市役所=2024年6月、同市本町

 奈良県香芝市は8月16日、市民からの生活保護申請の事前相談や受け付けの際の市議会議員の同席を認めると発表した。前市長時代までは同席を拒否していたが、今年6月に市長に就任した三橋和史市長が認める方向に転換する判断をした。

 市の議員同席拒否は、川田裕議長が委員長を務めていた2011年の議会改革特別委員会が決めた「生活保護の認定などで議員は市民と同席しない」との申し合わせが影響している。市は2023年3月、市民団体の香芝市生活保護問題調査団(団長・吉永純花園大学教授)の申し入れに対し「市議会において市政治倫理条例に抵触する行為とされていることから、議会の意見を尊重し、同席は遠慮いただいている」と答えていた。

 同委員会が根拠にした同条例は、市長や議員について「職務に関し不正の疑惑をもたれるおそれのある行為をしてはならない」などと定めている。

 また、市は2023年9月の市議会定例会本会議の代表質問で、川田議員が生活保護申請時の第三者の同席について「家族など本人以外の情報を知り得る状況にある」などと指摘した際、「個人情報保護の観点から不適切」と呼応する答弁をしていた。

 市は従来の対応を見直す理由について「テレビや新聞でも報道されてきたように、社会的にも批判が寄せられていた。他の多くの市町村と同様の対応をすることとした」とする。市によると、三橋市長は「生活保護制度が憲法第25条に規定する国民の最低限度の生活を保障するものであり、申請権を侵害しないことはもとより、侵害していると疑われるような対応も厳に慎むべき」として見直しを決めたという。

 見直しに当たって、議会改革特別委員会の見解に対しては「(委員会)独自のものであり、市としては採用しない。議員全員が同意しているものではない上、市が拘束される性質のものでもない」とした。

 申請者の家族などの個人情報の照会に関しては「扶養義務者の住所や資産、収入の状況を市から申請者に開示することは予定されていない。扶養義務者と相談してからでないと申請を受け付けないとする運用は不適切で、申請に先立って実施されるものではない」とした。

 また、市はこの8月から、議員などから職員への要望などの「働き掛け」があった場合、記録して定期的に公表する制度を取り入れており、「仮に不当な要求を受けることがあったとしても適切に対応し、申請の審査が左右されることはない」としている。

 市議会で議員の同席拒否を問題視し取り上げてきた青木恒子議員(共産)は「奈良の声」の取材に対し「驚いたというのが第一の印象」とした。青木議員は「法的に見てもやっと当たり前の所にたどり着いた。香芝市だけがそのような縛りをかけてきたのは問題だった。私は同行ができなくても、生活保護の申請者を支援する団体を発足させ、申請者を対象に学習会を開いてきた」と述べた。

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