ニュース「奈良の声」のロゴ

地域の身近な問題を掘り下げて取材しています

発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一

ニュース「奈良の声」が受賞 ジャーナリズムXアワード

最新ニュースをメールで受け取る【無料】

浅野善一

生活保護申請への同行、議員の役割考える 奈良弁護士会が香芝でシンポ

生活保護申請への議員の付き添い活動を題材に意見を交わしたパネルディスカッション=2023年7月30日、香芝市藤山1丁目の市ふたかみ文化センター

生活保護申請への議員の付き添い活動を題材に意見を交わしたパネルディスカッション=2023年7月30日、香芝市藤山1丁目の市ふたかみ文化センター

 生活保護申請への議員の付き添い活動を題材にした奈良弁護士会のシンポジウムが7月30日、香芝市藤山1丁目の市ふたかみ文化センターで開かれた。大学教授らによる講演やパネルディスカッションがあり、市民ら約150人が耳を傾けた。

 香芝市では昨年12月、申請への付き添いを実践している青木恒子(共産)市議会議員がこの付き添いを巡る議会での発言で、議会から出席停止の懲罰を科されている。同議員は一昨年12月、市議会福祉教育委員会で、川田裕議長が「議員の窓口への同行は禁止」と発言したことを自身に向けられたものと捉え、議長を批判する発言をした。

 基調講演ではまず、吉永純・花園大学社会福祉学部教授が「生活保護利用希望者に対する水際作戦の実態と地方議員の役割」の演題で話した。吉永教授は、日本の生活保護基準以下の世帯のうち実際に生活保護を利用している世帯の割合を示す捕捉率が22.6%で欧米の国々と比べても低いことを紹介。その要因として貯金額や車の保有に関する条件が厳しい上に、家族による扶養などを理由に申請を受け付けないなどの問題があると指摘、身近な存在である地方議員の申請同行の重要性を訴えた。

 続いて、市川正人・立命館大学法科大学院教授が「地方議員に対する懲罰処分等に対する司法審査の可否・範囲」の演題で話した。市川教授は、憲法上の根拠がある地方議会の自律権による懲罰権を認めつつも、全国の事例を挙げながら乱用も散見されるとして、裁判所が介入する例が増えていると指摘。議会が自律権の適正な運営をどう確保するかが課題とした。

 パネルディスカッションでは、両教授のほか生活保護を巡る問題に関わってきた古川雅朗弁護士が加わって意見を交わした。古川弁護士は「生活保護の申請に同行すると当事者から必ず聞かされる。『職員の対応が1人で行くときと全然違う』と。窓口のすべてとは言わないがこうしたことが少なからずある」と述べた。吉永教授は「権利擁護の一環で議員の役割は重要」とした上で中立的な福祉のオンブズマン制度が必要と提案した。 関連記事へ

読者の声