生活保護申請時の議員の同席認めない 奈良県香芝市の回答に撤回求め意見書 支援者などで結成の調査団
意見書提出に向かう香芝市生活保護問題調査団の人たち=2023年7月12日、同市香芝市逢坂1丁目
奈良県香芝市で浮上している生活保護申請時の市議会議員の同席禁止問題を受けて、生活保護利用者の支援者などで結成された香芝市生活保護問題調査団(団長、吉永純花園大学教授)は7月12日、福岡憲宏市長に宛てて「議員の申請サポートは市民全体の利益を擁護すること」などとする意見書を提出した。
同席禁止の問題は2021年12月の市議会福祉教育委員会で、国民健康保険料や生活保護の窓口への同行を巡る川田裕議長の発言に青木恒子議員(共産)が反論したことを発端として浮上した。調査団は今年2月、市に対し、議員の同席に関する見解などを求める申し入れを行い、翌3月、市から回答があった。
市の回答は「生活保護法や厚生労働省の通知では申請時の同行を禁止する定めはなく、市議会議員以外の支援者の同行は断っていない」とする一方、市議会議員については「市議会において市政治倫理条例に抵触する行為とされていることから、議会の意見を尊重し、同席は遠慮いただいている」とした。
市政治倫理条例は、市長や議員について「職務に関し不正の疑惑をもたれるおそれのある行為をしてはならない」などと定めている。
これに対し調査団の意見書は「市の回答は受け入れがたく強く抗議する」として、「生活困窮者の中には困窮状態を十分に説明できない人がいる。困窮者の命と暮らしを守る立場で申請のサポートをする支援者が必要なことは明らか」などとした。
調査団はこの日、意見書提出後に開いた会見で「生活保護申請は必ず受け付けなければならず、圧力をかける場面ではない。そこから先の家庭訪問や収入調査など可否を決める審査は役所内で行われている」と述べた。
調査団の調べによると、県内15福祉事務所の中でその市町村議会の議員の申請同行を認めていないのは香芝市だけという。
意見書を受け取った市生活支援課長は取材に対し「訴訟に関係することと理解しているのでコメントは控える」とした。
同問題を巡っては、議会は青木議員の発言が川田議長への侮辱に当たるなどとして、青木議員に陳謝の懲罰を繰り返し、これを拒否し続けた同議員は出席停止4日間の懲罰を科された。青木議員は市を相手取り、議会による出席停止処分で精神的苦痛を受けたなどとして、国家賠償法に基づく損害賠償請求訴訟を奈良地裁に起こしている。
「議員の同行は禁止」は2011年の議会改革特別委員会(川田裕委員長)が決めた「生活保護の認定などで議員は市民と同席しない」という申し合わせが根拠。青木議員の発言が問題とされた福祉教育委員会の1カ月前の2021年11月の議会運営員会で、川田議長は「申し合わせは、任期が替わっているので全部リセットになっている」と言明している。 関連記事へ