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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一

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ジャーナリスト浅野詠子

奈良県水道一体化 「単独経営でも活用できる国庫補助金ある」 大和郡山市議会一般質問で議員示す

大和郡山市議会定例会一般質問で能登半島地震被災地のパネルを示しながら水道の在り方を問いかける議員=2024年3月15日、同市役所

大和郡山市議会定例会一般質問で能登半島地震被災地のパネルを示しながら水道の在り方を問いかける議員=2024年3月15日、同市役所

 奈良県大和郡山市議会の定例会一般質問が3月15日行われ、前日に続き、県域水道一体化を巡る質問が相次いだ。料金面など一体化構想のメリットを生み出す原資として県や市はこれまで、国庫補助金獲得の意義を強調してきたが、不参加の市町村営水道に対しても耐震化関連の国庫補助金メニューがあり、これを活用すれば、1立方メートル当たり10円の値下げが可能であることが市の答弁で明らかになった。

 徳野衆議員(共産)は「(水道の老朽管更新などの)国庫補助金は、一体化に参加しないと受けられないという説明を市はしていたが、厚生労働省に聞いたところ、単独経営でも活用できる補助金がある」とただした。

 市上下水道部長は「病院・指定避難所に送水する重要給水施設配水管の耐震化に国庫補助金は得られる」とし、これを活用して、昨年1月の市民説明会で市が示した30年後の単独経営想定の料金試算に反映させると「10円ほど下がる」と述べた。その一方で「活用して単独経営を続けるより、一体化に参加した方が料金の上昇を抑制する効果が見込める」とした。

 徳野議員は「昨年4月にも国から水道水源開発等施設整備という補助金の改正通知が県を通じて市町村に来ていたが、こうしたメニューをなぜ活用してこなかったのか。一体化の協議中の他の市町村によっては敷設年度が不明な水道管が計800キロもあり(「奈良の声」既報)大変なことだ。市は丁寧な説明を省略しメリットばかり誇張していないか」と問い掛けた。

 上田清市長は「(国庫補助金の対象になる)病院・指定避難所に送水する重要給水施設配水管は市の全水道管のうち8%、延長は33キロ。補助率は4分の1で、道路や下水道工事に比べると低い。(5年計画策定などの採択要件に縛られ)市が日ごろ力を入れ(計画を前倒しするなど柔軟に工事を進めてきた)漏水対策上も使い勝手の悪い補助金」とけん制。一体化に参加する意欲を示した。

 料金試算に対しては上田健二議員(共産)が「一体化の主水源となる大滝ダム(国土交通省、川上村)の堆砂量増加に伴う対策費の地方負担分増加の見通しが、一体化の統一料金試算に反映されていないのでは」と批判した。

 能登半島地震被災地の深刻な断水問題を踏まえた議論もあった。3月7日の建設水道委員会や14日の一般質問では、水道一体化の主力施設となる県営水道の優れた点などを挙げて、一体化への参加条件となる北郡山浄水場(水源・地下水)廃止に賛成する意見が複数の議員から出ている。

 これに対し徳野議員は、同浄水場を残し単独経営を続けるよう市長に求めた。「被災地の輪島市は水道管の耐震適合率が52.6%と全国平均より高いが、市の職員は『(断水が深刻で)このありさま』と落胆していた。奥能登の被災地でまず市民を救ったのはそこにある地下水。県営水道を7割受水する七尾市では被災約1カ月後、地下水を水源とする浄水場のエリアの通水率は91%に達し、県水エリアにも送水して復旧を助けた。大和郡山市は、新庁舎を防災拠点と位置付けるが(近隣の)北郡山浄水場を廃止してはならない」と訴えた。

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