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浅野善一

公開の録画 起立議員の着席後に「賛成者いない」 奈良県香芝市議長、自身への不信任動議不成立

議長不信任決議案の動議に対する採決とその直前に行われた「国民スポーツ大会競技会場地の市町村の負担軽減に関する意見書」に対する採決の場面=2024年7月10日、香芝市ホームページ市議会録画中継から

 奈良県香芝市議会の議長が自身への不信任決議案の動議に対し、成立に必要な人数の起立があったのに不成立とした問題。当日の録画が7月16日、市議会ホームページで公開された。「奈良の声」記者は当時、傍聴席で取材していたが、再度、録画を確認した。議長が賛成者の有無の認定を、議員が起立したときには行わず、着席した後に行って、「賛成者なし」と宣言していることが分かる。

 7月10日の定例会最終日の本会議で、真鍋亜樹議員(無所属)が川田裕議長(無所属)に対する議長不信任決議案を議題とすることを提起した。

 録画から確認できる採決当時の様子は次のようなもの。画面は初め議長席を映していて、川田議長が「所定の賛成者の起立を求めます」と告げると、議員席に切り替わった。4人が起立した。議員が着席すると、画面は再び議長席に切り替わった。川田議長は議員席を確かめた後「所定の賛成者がおられないので、動議は否決されました」と宣告した。

 議員席からは「立ってた」と抗議の声が上がった。川田議長は「(起立している議員は)いなかった、最後(は)。いま(の時点では)座ってた、みんな。立って座られた」と反論、「もう1回やりましょ」との求めにも「やらない」と受け付けなかった。

 本会議終了後、「奈良の声」の取材に応じた川田議長が動議について「起立者がいなかった」と認定した理由として挙げたのは「人数を数えようとしたときには座っていた。起立者がいたら数え終わった後に『お座りください』となるが、そうしたことはなかった」というものだった。

 同市議会で、採決時に議長が起立者の数を確認後、「お座りください」と着席を促すこと自体は以前から行われている。ただ、採決の際の正規の決まりとしては、香芝市議会会議規則に「議長が表決を採ろうとするときは、問題を可とする者を起立または挙手させ、起立者または挙手者の多少を認定して可否の結果を宣告する」との規定があるのみ。

 議長の許可前に着席をしたら起立が無効になるといった決まりは、同市議会の長年の慣例、慣行をまとめた香芝市議会「先例、事例および申し合わせ事項集」(2017年10月編集、現任期の議会では無効扱いになっている)にもない。

 ほかの議案の採決の流れと比較すると、同じ日、動議の直前に行われた「国民スポーツ大会競技会場地の市町村の負担軽減に関する意見書」に対する採決では、川田議長は賛成議員の起立から2秒ほどで着席を促した上で「賛成多数と認め原案の通り可決しました」と宣告している。

 また、6月24日の定例会初日の「市議会議員の小学校教室無断進入に関する調査特別委員長報告」に関する採決では賛否が拮抗(きっこう)し、公開されている録画には、賛成議員の起立とほぼ同時に川田議長の「1、2、3、4…」と起立者を数える声が記録されている。

 一方、問題の動議では、議員が起立しても川田議長はすぐに賛成者の有無を認定せず、議員が着席すると、少し間を置いて「所定の賛成者がおられない」として、動議を不成立とした。議員が起立していた時間は、直前の意見書の採決のときと変わらなかった。

 同市議会では、動議の成立には提起者を含め2人以上の賛成者がいれば良い。採決の際、提起者は起立しないため、起立者が1人でもいれば動議は成立する。

 起立した議員の1人、筒井寛議員(enjoy香芝)は「起立者を数えるまでもなく、立っている人がいるだけで動議は成立する。議長が着席を許可するまで座ってはいけないと明文化もされていない」と話した。

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