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ジャーナリスト浅野詠子

奈良市「引き上げ算定の透明性十分でない」 県水道一体化、不参加2市への用水供給

用水供給単価の引き上げ問題で答弁する池田修・奈良市企業局長(奥中央)=2024年6月12日、奈良市二条大路南1丁目の市議会

用水供給単価の引き上げ問題で答弁する池田修・奈良市企業局長(奥中央)=2024年6月12日、奈良市二条大路南1丁目の市議会

 奈良県域水道一体化を協議する県広域水道企業団設立準備協議会(会長・山下真知事、26市町村と県営水道)が一体化に不参加の奈良市、葛城市に対する用水供給(卸売り)単価の引き上げを決めたことを巡って、奈良市は6月12日の市議会定例会一般質問で、「引き上げの算定過程の透明性が十分でない」との見解を示した。

 同協議会は、今年9月の市町村議会での議決を経て最短で2025年度に水道広域化の事業を開始することを目指している。用水供給単価は現行では1立方メートル当たり130円。引き上げ案では同136円になる。

 井上昌弘議員(共産)の質問に答えた。井上議員は今年4月の市議会建設企業委員会で、県に対し引き上げ案の算定の合理性を確認できる資料の提供を求めるよう市に要請していた。

 答弁した池田修・市企業局長は「今年4月24日、文書で企業団設立準備協議会事務局に対し、企業団全体の収支見通しや用水供給事業の収支を算定する根拠が確認できる資料を出してほしいと請求。翌5月21日、一部の資料提供を受けたが、企業団全体の収支見通しなどについては『公表することを前提としていない』との理由で示されなかった」と述べた。

 井上議員が今後の対応をただすと、池田局長は「現在、提供を受けた一部の資料の範囲内で算定根拠について分析している。その結果を踏まえた判断になるが、問題となったのは、算定過程における透明性が十分でなかったことで、根拠が明瞭でなく、一方的な裁量が働いているのではないかという疑念がある。このことから、今後、企業団側と受水2団体(奈良市、葛城市)との間で用水供給単価を算定するための一定のルール作り、仕組み作りが重要」とした。

 井上議員は「奈良県営水道は全国的に屈指の高さの単価なのに(一体化不参加の)2市に狙い撃ちで引き上げを図るのは問題。今回の値上げ案については受水する2市に何の相談もなかった。これまで用水単価の改訂の際には、奈良県県営水道受水協議会で協議してきたが、今回はそうした手続きが取られていない」と批判した。

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