奈良市、受水量抑制で対応 県水道一体化不参加団体への用水値上げ 自己水増量へ
水道の配水形態のパネルを掲げながら質問する山本議員=2024年6月11日、奈良市二条大路南1丁目の市議会
奈良県域水道一体化を協議する県広域水道企業団設立準備協議会(会長・山下真知事、26市町村と県営水道)の今年3月6日の会議で、一体化に不参加の奈良市、葛城市に対する用水供給(卸売り)単価を引き上げる案が了承されたことに対し、奈良市は11日、2025年度事業開始予定の企業団からの受水量を減らして自己水源(布目ダム、比奈知ダム)の給水量を増やし対応する考えを示した。
開会中の市議会6月定例会一般質問で山本憲宥議員(自民)が取り上げた。現在、県営水道が市町村水道事業に販売する浄水の単価は1立方メートル当たり130円だが、県は協議から離脱した2市に対する同単価を一気に5%値上げし、同136円とする方針を決めた。
山本議員は「受水量自体を減らすことで費用の増加を抑えることができるのでは」と投げ掛けた。
池田修・市企業局長は「値上げの方針を受け、コスト削減の観点から改めて受水量の削減方針を検討する必要がある。現時点での削減計画は、現有の施設を前提に配水エリアの運用を変更するなどして対応する予定だが、削減をさらに進めるためには、奈良市全体の水運用に影響するため、新たな施設整備が必要になる。県と市が災害時に相互に融通し合う一面も勘案する」と答弁した。
具体策を問われると「現在、県水は主に同市高樋町の白川配水池で受水しており、市街地南東エリアの6小学校区、約2万8000人に配水。県水を減量する相当分を自己水源から補完する必要があり、同エリアには県水と自己水を併用して供給する区域があることから、水圧調整によって、自己水の供給量を増量することができる、近接する自己水配水エリアの拡張もできる」とした。
さらに受水量を減らす算段として「新たな基幹水路の整備による安定供給が必要。現在計画中の東部送水幹線(7.5キロメートル、口径700ミリ)を活用することが可能」とした。
山本議員は、県が一体化構想を打ち上げた際に市町村で唯一、奈良市が開いた第三者委員会(奈良市県域水道一体化取組事業懇談会、座長浦上拓也・近畿大学教授、11人)の元委員。「(用水の値上げを)最も危惧していた。奈良市民の負担が増大することがないよう、安全安心の水道供給の推進に努めてほしい」と要望した。
一方、用水の値上げ問題は本年3月の市議会決算予算委員会建設企業分科会でも取り上げられ、県の一体化構想が固まる以前から市は県との協議によって県営水道の受水量を段階的に削減してきたことが大西淳文委員(維新)の質疑で判明した。現在、県営水道の受水量は年間476万立方メートルで奈良市の給水量の約1割、受水費は6億8000万円程度。
奈良市営緑ケ丘浄水は水源地からの自然流下により1立方メートル当たり69円で製造できる。大阪府広域水道企業団の用水供給単価は72円、阪神水道企業団は90円。周辺事業体と比べ割高な奈良県営水道は、市町村に浄水場の廃止を促して県水の受水量を増大させ、これが水道統合推進の土台になった。