奈良県水道一体化 技術職員確保の在り方、協議まだ
奈良県広域水道企業団の本部に予定されている田原本町保健センターの建物=2024年4月18日、同町宮古
市町村域を越えた人的資源の活用をメリットの一つに挙げる奈良県域水道一体化を巡り、技術職員の確保に向けた具体的な協議がまだ行われていない。県内26市町村水道事業の直営形態を一気に廃して県営水道と統合し、料金統一による2025年度の事業開始を目指す同計画。今年9月には市町村議会の最終判断となる関連議案の採決が迫っている。
隣の大阪府東大阪市では水道統合を巡る技術職員の在り方が熱心に論議されている。
同市では今年3月、周辺5市との水道統合議案(府域一水道構想の一環)を市議会が賛成少数で否決した。公営企業に詳しい同市の職員は「すでに水道を統合している諸団体の状況を観察しても、人材の確保が難しい状況に改善がないことなどから、たとえ統合しても職員の確保が難しい状況が好転するわけではないだろう」と話す。
同市水道の技術職員は約80人。東大阪市議会のこれまで論議では、技術者の少ない団体などと統合することにより、東大阪市の水道職員の技術者がそうした地域に派遣されることになれば「単独経営のときより市内の技術力が低下する懸念はないのか」との指摘があった。
また水道統合の受け皿となる府広域水道企業団(一部事務組合、特別地方公共団体)への身分移管を希望する職員が16%にとどまり低調なことも議会で取り上げられた。
奈良県は企業団発足後の当分の間、各構成団体からの派遣によって対応し、順次企業団への身分移管や新規採用を実施する考えで、協議に参加する26市町村も了承している。
県水道局県域水道一体化準備室は「企業団の採用計画はこれから立てる。小さな市町村では、1人の技術職員しか確保できていないケースもある。一体化は10人の技術者のいる団体などとも統合することになり、人的な形成につながる。水道の広域化により人的基盤が強くなることは国の認識でもあり、改正水道法もこれを踏まえて施行されている」と話している。 関連記事へ