市水道水源の地下水量「安定」 奈良県大和郡山市議会、一体化参加巡り「県営水道受水比率下げられる」
大和郡山市役所=2023年3月9日、同市北郡山町
開会中の奈良県大和郡山市議会定例会は3月9日、一般質問が行われ、県域水道一体化への参加の是非を巡る問題が取り上げられた。市は、市営水道の水源として利用している地下水の水量が安定していることを明らかにした。
関本真樹議員(豊政会)の質問に市上下水道部の富田豊市部長が答えた。市が2015、16年に実施した地下水賦存量調査を基に、市内の地中に蓄えられている利用可能量は40、50年前の地下水利用開始の時代とほぼ変わらない、と述べた。
井戸の深度は約300メートル。一方で、井戸には泥などがたまり浅くなる傾向があって、揚水量は40、50年前と比べ約2割減。新たな場所で井戸を掘削することは土地の確保などで困難が伴うとした。
これに対し関本議員は、一体化の協議から離脱した葛城市(水源はため池9カ所と県営水道)の事例を挙げて提案した。同市は単独経営を続けた場合の水道料金の試算を、県営水道の受水比率を0%から75%まで六つのパターンに分けて行っているとし、「大和郡山市でも試算の方法を見直す余地がある」と述べた。
さらに、市の水道供給量がピークだった2001年当時は、地下水だけで年間700万トンをくみ上げていたことを挙げ、現在に置き換えれば「県営水道の受水比率をもっと下げられる」と訴え、「単独経営のメリットを模索できる。新たな井戸の掘削は公共施設敷地や市有地でも可能だ。広域化による大滝ダム導水管の複線化などの投資と比べると小さい規模である」とした。
現在、市の水源構成は、県営水道(主水源・大滝ダム)と自己水源がほぼ50%ずつ。市はこれまでこの比率を基に、単独経営は水道料金が高くなって不利と説明してきた。県営水道の受水費は1立方メートル当たり130円。地下水を水源とする浄水の製造単価は90円程度に抑えることが可能とされる。
上田市長「覚書前は持ち寄り資産のルール化協議あった」
このほか、上田清市長は丸谷利一議員(豊政会)の一般質問に対する答弁の中で、今議会で争点になっている水道会計の内部留保資金の問題に関連して、県域水道一体化の覚書締結前には「資産の持ち寄りに時間をかけて協議しようという方向性があった」と述べた。
上田市長は、内部留保資金28億円を一般会計に移転した当時を振り返り、「当時の一体化構想は浄水場を3つ(県営2浄水場と奈良市緑ケ丘浄水場)に集約し、大和郡山市の浄水場は廃止する流れだった。28億円は昭和浄水場を更新するために積み立てたもので、(企業団への)引き継ぎは市民に説明がつかない状況にあった」と語った。
この点について市上下水道部は、覚書のほぼ1年前の2020年1月から2月にかけて、28市町村の水道担当管理職らで行った協議で、資産の持ち寄りについてすべてとするのではなく、ルールを作ろうという一定の合意があったとした。
しかし、県は同年5月の県域水道一体化検討会で提示した水道事業統合の覚書案で「関係団体等が所有する資産等は、統合時に企業団にすべて引き継ぐ」と定めた。
翌6月、大和郡山市は、一体化への参加を前提として内部留保資金を一般会計に移転したが、荒井正吾知事から非難され、覚書締結に参加しなかった。
その後、県は持ち寄り資産の配分と投資のルールを定め、上田市長は昨年12月に一体化参加を表明。今議会に参加を前提として28億円を水道会計に戻す議案を上程したが、3月2日の建設水道委員会は一体化参加への疑問から賛成少数で不承認とした。 関連記事へ