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浅野善一

情報公開に手数料300円 「受益者負担」理由 奈良県香芝市、条例改正提案へ 徴収市町村は少数

奈良県香芝市役所=同市本町

奈良県香芝市役所=同市本町

 奈良県香芝市は、市情報公開条例に基づく開示請求に対し、1件につき300円の手数料を徴収する条例改正案を、2月17日開会の市議会3月定例会に提出する。市は「受益者負担」を理由にしている。複写代などの実費は現在も請求者が負担している。行政に説明責任を負わせる情報公開制度を巡っては、国や奈良県は手数料を徴収しているが、県内市町村の大半は無料。考え方は分かれている。

 現行の条例では、開示請求して文書の交付を受ける場合、白黒の複写なら1枚当たり10円の実費を請求者が負担している。閲覧のみなら無料。

 改正案では、開示請求1件につき300円の手数料を徴収する。ただ、複写代などの実費分に充当する仕組みにしているため、文書の交付を受ける場合、白黒の複写なら1件当たり30枚を超えなければ実費の負担はない。一方、超える場合には実質的な負担額は現行の条例と変わらないことになる。

 しかし、1件当たりの複写の枚数が少ない場合は、実費の負担のみの現行の条例に比べれば負担額は増える。件数次第では実費の何倍にもなる可能性がある。また、閲覧のみの場合も手数料が必要になる。このため開示請求すれば枚数や閲覧のみかどうかにかかわらず最低でも300円かかることになる。

 市文書法制課は手数料徴収の理由について、「奈良の声」の取材に対し「開示請求への対応の事務で人件費が発生しており、受益者負担の観点から見直しが必要と考えた。国や県も徴収している」と述べた。1件の範囲や件数の数え方については「指針を策定している段階」とした。条例改正の検討に当たっては、市情報公開・個人情報保護審査会にも諮問したという。

 市情報公開条例の施行は2001年。開示請求できる人については当初、市内在住者などに限っていたが、2021年4月の改正で制限をなくし「何人も」に改めた。最近の開示請求件数は、2023年度が121件、2022年度が93件。2021年度が106件。文書法制課によると、2024年度も極端な増加はないという。

 県内12市の動向を見ると、手数料を徴収しているのは橿原、五條、生駒の3市。橿原は市内在住者などは無料だが、それ以外の人は1件300円。五條は開示請求権を市内在住者などに制限しているが1件200円の手数料を設定。生駒は法人が業務のため行う開示請求は1件100円で、それ以外は無料。県の手数料徴収は昨年6月からで1件300円(アプリ利用の場合は200円)。

 香芝市民の木原敏洋さん(78)は小学校統廃合問題で情報公開条例を何度も利用。前市長時代、市の小学校再編方針(三橋和史現市長が白紙にしている)の検討が川田裕議長(当時)ら議会の特定の議員だけが関与して進められたことが、木原さんが開示請求した会議録から判明した。木原さんは「当初の開示請求では、市は“会議録はない”と言った。情報公開は今でも不十分なのに、手数料を取ることで開示請求がしにくくなれば、知る権利の制限につながる」と懸念する。

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