奈良県香芝市長、SNSに「市長経験者が開示請求乱発」 批判への反論で個人情報に言及 前市長が「職員の残業時間増えた」
奈良県香芝市の行政文書開示請求書、浅野善一撮影
奈良県香芝市の三橋和史市長がSNS「X(エックス)」への投稿で、「市長経験者が乱発する開示請求」などと、個人の請求情報に言及した。福岡憲宏前市長の市議会議員選挙への出馬意向を伝える新聞記事で、福岡氏が「三橋市長の就任後、職員の残業時間が格段に増えた」と批判したことに対し、同氏の開示請求への対応が影響しているとの反論だが、行政機関が保護すべき個人情報にならないか。三橋市長は取材に対し「前市長は開示請求していることをSNSで公開しており、請求は周知の事実。指摘は当たらない」と述べた。
投稿は1月18日で、当該の奈良新聞記事のオンライン版をリンクさせる形で残業時間について「今まで市長が仕事をしてこなかった。増加分は市長経験者が乱発する開示請求等への対応と負の遺産を清算するための仕事」などと書き込んだ。
「市長経験者」と名前は伏せているが、リンクさせたオンライン記事の見出しでは名前が明らかになっており、誰であるか容易に類推できる。オンライン版は有料で、表示されるのは記事の冒頭部分のみのため、三橋市長が反論した部分を読めるのは契約者に限られる。
福岡氏はSNS「TikTok(ティックトック)」の自身のアカウントに、残業時間の問題など市政を題材にした動画を複数投稿。市への開示請求で開示された文書を示すなどしながら批判を展開している。ただ、投稿からは請求の件数までは分からない。
市情報公開条例上は、三橋市長は開示義務を負う実施機関の立場、福岡氏は開示請求権を行使する側になる。
個人情報保護法は、行政機関の長などに対し「保有個人情報の漏えい、滅失または毀損(きそん)の防止その他の保有個人情報の安全管理のために必要かつ適切な措置を講じなければならない」と求めている。また、職員などに対しては「業務に関して知り得た個人情報の内容をみだりに他人に知らせ、または不当な目的に利用してはならない」との義務を課している。
三橋市長は取材に対し、自身の投稿について「政治家同士の言い合い」だとし、「(こちらにも)政治的言論に反論する権利はある」と述べた。
市長は現在開会中の市議会3月定例会に、市情報公開条例の改正案を提出している。手数料の導入を目指すもので、開示請求1件につき300円を徴収する。
三橋市長は昨年5月の現職・前職・新人の4人が立候補した市長選挙で福岡氏らを破り初当選した。市議選は3月23日に行われる。