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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一

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ジャーナリスト浅野詠子

探る)地下水の有用物語る証人 県中央卸売市場の自己水源45年

県中央卸売市場の浄水施設。深度150メートル掘削の地下水を活用している=2021年10月8日、大和郡山市筒井町

県中央卸売市場の浄水施設。深度150メートル掘削の地下水を活用している=2021年10月8日、大和郡山市筒井町

 来年、開設45年となる奈良県大和郡山市筒井町の県中央卸売市場は当初から、自己水として地下水をくみ上げ、事業用水に利用してきた。同市場は奈良盆地において、地下水という自己水源が有用であることを物語る証人といえそうだ。

 こうした側面とは裏腹に、市町村営のすべての地下水浄水場の廃止を目指す県主導の県域水道一体化計画が急ピッチで進められている。

 中央卸売市場は今後、様変わりし、水の大口需要が発生することになる。「にぎわい創出」と銘打ち、宿泊施設などを盛り込んだ再整備計画に県が着手したからだ。県は引き続き地下水を利用し、新たに水道の水を買うことも検討している。

 「事業規模が大きくなるので、多様な水源を確保することは安心、安全という視点から検討されていると思います」と中央卸売市場に勤務する職員は話す。

 こうした考え方は、県域水道一体化計画において市町村営の地下水、ため池などの浄水場を存続し、現行のダムの水との共存でよいと訴える県北部などの住民の声と共通する側面もある。

 中央卸売市場のある大和郡山市の市営浄水場は、地下水専用の浄水場の水が特に「おいしい」と評判が高い。遠い吉野川(紀の川水系)のダムの水を利用する県営水道の価格と比べ、製造コストも今のところ低い。県水資源政策課によると、中央卸売市場のように専用水道を稼働している事業所は大和郡山市内に11ほどある。

 そうした事業所は大手スーパー、食品メーカー、病院、UR都市機構の賃貸住宅など多様だ。市上下水道局の話では、企業防衛のための地下水くみ上げなどの自己水開発は市内では増加の傾向にあるという。裏を返せば、市内に進出する企業に自己水より、もっと市営の水を買ってほしいとの思いもある。

 県内でも屈指の経営成績を誇る大和郡山市の水道事業は、県域水道一体化への参加表明を留保している。このまま推移すれば、再整備が進む中央卸売市場は、その水の仕入れ先を、一体化の企業団か、地元自治体か、入札によって決めるかもしれない。

 中央卸売市場の開設は1977年。水源として地下水を開発した。地下150メートルまで掘り下げ、水面は地上から43~46メートル下にある。年間の使用量は17万立法メートル前後。浄水として市場業務全般に使っている。沈殿池やろ過施設を有し、水質測定が行われ、さながら町の小さな浄水場のようだ。

 県水道局県域水道一体化準備室は「中央卸売市場の再整備に伴う水需要が企業団の事業にどう反映するか、まだ試算していない」と話す。 関連記事へ

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