香芝市の第三者同席「不適切」答弁で奈良県に指導申し入れ 生活保護申請時、市民団体「本人同意なら拒む理由ない」
奈良県への申し入れの後、記者会見する「奈良県の生活保護行政をよくする会」=2023年11月9日、奈良市登大路町の県教育会館
生活保護申請時の第三者の同席について、奈良県香芝市が親族の個人情報保護を理由に「不適切」と今年9月に議会で答弁した問題で、市民団体「奈良県の生活保護行政をよくする会」(代表世話人・古川雅朗弁護士)は11月9日、「申請者が同意している場合に第三者の同席を拒む理由はない」として、県に見解を求めるとともに指導を申し入れた。
同会はこの日、県地域福祉課に対し2点を申し入れた。1点は、福祉事務所を設置する県内自治体を対象に同会が実施した「生活保護のしおり」の点検・改善申し入れの結果( 2023年9月16日既報)の中間報告と、これを踏まえた県からのさらなる改善指導。もう1点が香芝市の問題。同会は申し入れ後、奈良市登大路町の県教育会館で記者会見を開いた。
古川弁護士は第三者の同席について「いろんな困難を抱えて困窮状態に陥っている方の支援は、必要かつ権利としての生活保護を実現する上で重要。そのような支援の在り方を全く認めない、拒絶するというようなことがあってはならない」と述べた。申し入れに対し県は、香芝市に答弁の趣旨、意図を確認したいと答えたという。
さらに同弁護士は「(第三者の同席を認めないことが)実質的に申請権の侵害あるいは水際作戦になるとすれば、是正すべく県に指導していただきたい」と期待を述べた。同会によると、県内自治体でこうした対応をしているのは香芝市だけという。
県地域福祉課は「奈良の声」の取材に対し「(同会から)文書をいただき、議会の議事録を初めて見た。答弁の趣旨が分かりかねることもあるので、(同会に対し)現時点ではコメントはしなかった」とし、香芝市に対しては確認の予定と述べた。
同市の答弁があったのは9月7日の市議会定例会代表質問。「無所属の会」の川田裕議員(議長)が「生活保護申請では、本人だけでなく家族など関係者のいろいろな情報が輻輳(ふくそう)している」として、第三者の同席について市の考えをただした。
これに対し、市総務部長は「生活保護申請に関する事情聴取では、世帯員の所得、親族などに関することなど、本人以外の情報を聴取する場面も多分にある。聞き取りをするのが市であることを考えると、職員による個人情報の間接的漏えいに当たる恐れがある」との見解を示した。
一方で、香芝市は今年3月、同市の生活保護問題を調査している団体からの申し入れに対し、市議会議員以外の支援者の同行については「生活保護法や厚生労働省の通知では申請時の同行を禁止する定めはなく断っていない」と容認する回答をしている。 関連記事へ