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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一

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浅野善一

保護申請時の第三者同席「不適切」議会答弁に「一貫性ない」の批判 奈良県香芝市、今年3月申し入れへの回答では容認

生活保護問題調査団への香芝市の回答文書。支援者の同行については「断っていない」と述べている

生活保護問題調査団への香芝市の回答文書。支援者の同行については「断っていない」と述べている

 生活保護申請時の第三者の同席について、奈良県香芝市が親族の個人情報保護を理由に「不適切」と議会で答弁した問題。市は今年3月、同市の生活保護問題を調査している団体からの申し入れに対し、市議会議員以外の支援者の同行については「断っていない」と容認する回答をしていた。市は答弁と回答に「ずれはない」とするが、調査団体の代表者は「まったく一貫性がない」と批判した。

 9月7日の市議会定例会代表質問で「無所属の会」の川田裕議員(議長)が市の考えをただした。同議員は「生活保護申請では、本人だけでなく家族など関係者のいろいろな情報が輻輳(ふくそう)している。正当な理由のある同席者ならいいが、そうではない場合、本人の確認があったとしても、第三者がそれ以外の情報を知り得る状況にある」と述べた。

 これに対し、市総務部長は「生活保護申請に関する事情聴取では、世帯員の所得、親族などに関することなど、本人以外の情報を聴取する場面も多分にある。聞き取りをするのが市であることを考えると、職員による個人情報の間接的漏洩(ろうえい)に当たる恐れがある」との見解を示した。

 さらに総務部長は、申請権の侵害はあってはならないとして「意思疎通やコミュニケーションに支障がある人に対し、適正手続き確保のため、それぞれの特性に応じた意思疎通の手段を確保するような配慮を行うべき」と述べるとともに「個人情報の保護が後退してはならない」とした。

 川田議員が「市の方針としては、特別な場合でない限り(第三者の同席を認めないことを)徹底していくという解釈で良いか」と念を押すと、総務部長は「お見込みの通り」と応じた。

 一方、同市では生活保護申請時の市議会議員同席を巡って、申請者に付き添おうとした議員が同席を断られている。また、2022年12月の市議会常任委員会で、川田議長が「国民健康保険料や生活保護の窓口への議員の同行は禁止。断っても帰らない場合は議会に報告を」と述べたことに対し、青木恒子議員(共産)が「議員に対する圧力と感じた」と発言して、議会から出席停止の懲罰を科された。

 こうした問題を受けて結成された香芝市生活保護問題調査団(団長、吉永純花園大学教授)は今年2月、市に対し、議員の同席に関し見解を求める申し入れを行った。3月にあった福岡憲宏市長名の回答は、議員については「市議会において市政治倫理条例に抵触する行為とされていることから、議会の意見を尊重し、同席は遠慮いただいている」としたが、議員以外の支援者については「生活保護法や厚生労働省の通知では申請時の同行を禁止する定めはなく断っていない」と述べていた。

 市生活支援課長は「奈良の声」の取材に対し、総務部長の答弁と回答の「ずれはない」とし、「答弁の解釈については、総務部長が述べた以上のことはお答えできない。答弁が回答と違うというのは記者の捉え方だと思う」と答えた。

 また、意思疎通などに支障がある人への配慮では、どのよう人が対象になるのかについて同課長は「一般論で言えば、権利擁護事業を受けておられる方などが考えられる。例えば自身の金銭管理ができない人や成年後見人が付いている人などが含まれる」と述べた。

 調査団の吉永団長は市の答弁を次のように批判した。

 「親族の扶養義務者による扶養は生活保護開始の条件ではないので、支援者が親族の個人情報を聞く必要はない。支援者の同席は、申請者に生活保護の正しい情報をしっかり伝えるとともに、役所に窮状を分かってもらうという意味で必要。申請者本人の了解が得られれば問題はない。

 申請者が聞かれたくない親族の情報があるというのなら、その場だけ席を外したらいい。生活保護制度の仕組み上、親族の個人情報保護は第三者の同席を拒む理由にならない。また、調査団に対する3月の回答では支援者の同席を認めており、まったく一貫性がない」 関連記事へ

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