ニュース「奈良の声」のロゴ

地域の身近な問題を掘り下げて取材しています

発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一

ニュース「奈良の声」が受賞 ジャーナリズムXアワード

最新ニュースをメールで受け取る【無料】

ジャーナリスト浅野詠子

奈良県域水道一体化 料金試算やり直しへ 山下知事、2025年度の事業開始にこだわらず 第1回法定協で示す

県広域水道企業団の設立準備に向けた第1回法定協議会で水道料金の統一や試算に疑問を投げかけた山下真知事(中央奥)=2023年7月21日、奈良市の県コンベンションセンター

県広域水道企業団の設立準備に向けた第1回法定協議会で水道料金の統一や試算に疑問を投げかけた山下真知事(中央奥)=2023年7月21日、奈良市の県コンベンションセンター

 奈良県域水道一体化の受け皿となる県広域水道企業団(一部事務組合)の設立準備に向けた第1回法定協議会が7月21日、奈良市の県コンベンションセンターで開かれた。会長の山下真知事は、荒井正吾前知事時代に進められた水道の広域化に理解を示しながらも、県が中心となって行った水道料金の試算に疑問があり、やり直す必要があるとした。参加26市町村議会が合意した2025年4月1日の統一料金による事業開始についても疑義を述べ、「たとえ開始時期が一年遅れても合意形成が大事」とした。

 山下知事が一体化の協議会に出席するのは初めてで、水道の広域化について具体的な考えを述べるのも今年5月の就任以来初めて。

 これを受けて、企業団議会の定数や用水供給単価などの審議のため後日予定されていた検討部会の前に、あらためて全関係市町村長の参加による協議会を開き、方向性が検討されることになった。

 山下知事は「一体化の企業団は設備投資を集中して行う予定だが、県の試算では令和36(2054)年には純資産がマイナスになる。持続可能性に一抹の不安がある。料金の初期設定が安すぎるからそうなるのでは」と述べた。

 これまで県が試算したシミュレーションでは企業団スタートの初年度の料金は、1立方メートル当たり183円。大淀町を除く参加すべての市町村で、料金が値下げになる。大淀町に対しては値上げにならないよう、別会計のセグメント方式を採用。現行の26市町村間の水道料金に著しい格差があり、統一料金によって企業団は減収減益の状態で事業を開始するが、国庫補助金と県支援金を生かしながら、単独経営より水道管の老朽化対策が進むとアピールしてきた。

 また、単独経営より一体化を選択した方が値上げ幅を抑制できるとする県の試算に対し、知事は「物価上昇や賃金上昇、企業債の金利の動向などで不確定要素が多い」と疑問を述べた。

 県の料金試算は、国立人口問題研究所の将来人口推計や施設を統廃合する効果などを勘案し、日本水道協会刊行の「水道料金改定業務の手引き」を参考資料の一つにしている。

 山下知事は「標準的な試算だけでなく、もっと厳しい試算や楽観的な試算など、少なくとも3通りぐらいの試算をすることが大事」と試算のやり直しに意欲を示した。給水人口が約91万8000人の規模で初年度から統一料金となる水道広域化は全国でも例がない。知事は「なぜ統一料金でなければ水道の広域化は達成されないのか、理由が明確でない」と疑義を述べた。

 森章浩田原本町長は「知事提案の統合時に統一料金を外すとしたら、全関係市町村の議決を経た基本合意の前提が崩れるので、いったん枠組みは解散すべきでは。奈良市が参加しやすい条件が見いだされるかもしれない」と意見を述べた。 関連記事へ

読者の声