探る)香芝市議会出席停止処分「違法」判決 問題の背景を「奈良の声」の追跡記事から考える
判決後、記者会見に臨む青木恒子香芝市議会議員(左から4人目)と弁護団=2024年1月16日、奈良市
奈良県香芝市議会の青木恒子議員(共産)に対する出席停止処分を「裁量権の範囲を逸脱し違法」とした1月16日の地裁判決。問題の背景を「奈良の声」のこれまでの追跡記事から考えたい。関連する記事を選び出してみた。
青木議員は、議会の福祉教育委員会で国民健康保険料や生活保護の窓口への同行の是非を巡って、同議員を念頭に置いたと受け取れるような川田裕議長の発言に反論、抗議。これが議長への「侮辱、名誉棄損」とみなされ、議会から陳謝や出席停止の処分を科された。
まずは、青木議員が反論、抗議した議長の発言内容「議員が国民健康保険料や生活保護の窓口に同行することは禁止」が事実かどうかを検証した記事。「禁止」と断言するには疑問があることを指摘した。議長の正確さを欠く発言が青木議員に不要な威圧感を与えた可能性がある、と問題提起した。…該当記事(1)本文末尾
続いて、出席停止処分議決の直後に議会棟で起きた事件を追跡した記事。青木議員が議決について傍聴に来ていた複数の市民に報告をしていたところ、議会事務局から市庁舎管理規則が禁止する「宗教、政治的問題に関する演説行為」に当たるとみなされ、中止を命じられた。これは青木議員に対する非難決議にも発展した。「演説行為」の禁止が規則に追加されたのはこの1カ月前だった。…同(2)
懲罰問題を機に、生活保護申請時の議員の同行は認められるべきとの声が制度利用者の支援に取り組む人たちから上がる一方、香芝市は議会答弁で第三者の同席について、親族の個人情報保護を理由に「不適切」との見解を示した。「奈良の声」はこの動きと関係者の反応を追った。…同(3)
地裁判決は、出席停止処分議案に賛成した議員にも過失があると認定した。香芝市議会の議会運営の問題を考える上で、川田議長が市長の3つの諮問機関の会長に就任していることについて検証した記事も挙げたい。市長の意思決定に関わる意見の偏りや、議会と執行機関が対峙(たいじ)する二元代表制の形骸化が懸念されることを指摘した。…同(4)
「奈良の声」は昨年、市議会傍聴席の記者席を利用できなくなった。議会が記者席の使用について「記者クラブに所属の記者に限る」との対応を取るようになったため。「奈良の声」は一連の問題について取材、報道の実績を積み上げてきた。議会は形式的な理由を盾に取材者を選別した。…同(5)
該当記事(見出し)の一覧
(1)の記事
◆検証)香芝市議の懲罰問題 議長発言「国保、生活保護窓口への同行禁止」 現議会の申し合わせに無く(2022年11月23日) 記事
◆香芝市議への懲罰発議者「“パワハラ”発言が論点」 現議会申し合わせに「議員の窓口同行禁止」無し 「奈良の声」指摘に(2022年11月28日) 記事
(2)の記事
◆傍聴市民への報告、政治演説とみなす 応接室使用の議員に中止命じる 香芝市議会、出席停止議決巡り(2023年1月18日) 記事
◆「次元低いこと言うな」引用発言 記者録音で確認できず 応接室使用巡る議員非難の決議 香芝市議会(2023年1月23日) 記事
(3)の記事
◆生活保護申請の第三者同席「不適切」 香芝市、議会で答弁 「親族など本人以外の個人情報聴取する場面も」理由に(2023年9月7日) 記事
◆保護申請時の第三者同席「不適切」議会答弁に「一貫性ない」の批判 香芝市、今年3月申し入れへの回答では容認(2023年9月11日) 記事
◆生活保護申請の第三者同席「不適切」答弁問題 香芝市、「事情聴取の場面に限定」と主張(2023年12月10日) 記事
(4)の記事
◆市長の方針検討する会議の会長に議会議長 香芝、小学校の統廃合計画などけん引 二元代表制の立場違いあいまいに(2023年8月11日) 記事
◆議長が市長の3つの諮問機関の会長 香芝市、意見の偏りや二元代表制の形骸化懸念 在り方に統一的な決まりなし(2023年10月15日) 記事
(5)の記事
◆記者余話)クラブ以外の記者の使用認めず 香芝市議会記者席、扉に張り紙(2023年6月27日) 記事