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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一

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浅野善一

奈良県香芝市が控訴へ 議員出席停止処分「違法」の地裁判決不服 議会が可決・承認

香芝市役所=同市本町

香芝市役所=同市本町

 奈良県香芝市議会の青木恒子議員(共産)に対する陳謝や出席停止の処分を巡る訴訟で、奈良地裁が「処分は裁量権の範囲を逸脱し違法」などとして、市に国家賠償法に基づく損害賠償を命じた判決について、市はこれを不服として1月24日、議会臨時会に大阪高裁への控訴の承認を求める議案を提出、議会は賛成多数で可決した。

 控訴は、高裁に対し地裁判決の取り消しと損害賠償請求の棄却を求めるもの。市は提案理由の説明で「実情は議会の懲罰に端を発する事件であることから第一義的に議会の判断を仰ぎたい」とした。

 市総務部長は議員との質疑応答で、控訴の理由について「処分に賛成した議員の職務上の義務や過失については、議会の独自性や自律性に関係するため市としてコメントする立場にない」とした上で、「最高裁判例で出席停止は司法審査の対象とされているが、それ以下の陳謝について違法とするのは極めて先例的で、その先例的価値はどれくらいのものなのか明らかにするため、上級審の判断を求めたい」などと説明した。

 また、福岡憲宏市長は、一部の議員から控訴を求める嘆願書が提出されていたことを明らかにした。

 採決に当たっての討論では、中井政友議員(共産)が反対の立場で「少数派議員に対するいじめのようなことがあってはならない。判決は憲法の住民の自治の理念に沿った全く妥当な判断」などと訴えた。

 これに対し、賛成の立場では木下充啓議員(自民)が「陳謝拒否に対してはそれより上の出席停止処分となるのが通常。処分に賛成した議員に過失があるとの判決には納得できない」などと訴えた。

 採決では、出席議員14人のうち採決に参加しない議長と退席を命じられた青木議員を除く12人のうち、8人が賛成、4人が反対した。内訳は賛成が公明3人、自民2人、維新・「無所属の会」・無所属各1人。反対がenjoy香芝2人、維新・共産各1人だった。

 この日、本会議に先立って開かれた議会運営委員会では、議会の判断を仰ぎたいとしながら市から議員への判決文配布がなかったことに対し、委員の一部から配布を求める意見があり、採決が行われたが否決された。市から議員への事前の判決文配布はなく、議会から市への要求もなかった。配布要求に賛成しなかった委員の1人は取材に対し「自分で市に資料要求し入手した。他の議員もそうしているのではないか」と話した。

 青木議員は控訴が可決されたことについて「判決後の記者会見で弁護団は完全な勝訴と評価した。議会は判決に真摯(しんし)に向き合っていない」と批判した。

 1月16日の地裁判決は、青木議員に対する6回の懲罰のうち1回目から5回目までの陳謝処分について、懲罰動議書に記された懲罰理由以外の内容が含まれているなどとし、裁量権を逸脱、またはこれを乱用するもので違法とした。さらにこうした違法な陳謝処分の拒否を理由に、6回目の懲罰でより重い出席停止処分を科したのは、同様に裁量権を逸脱するものなどとし違法とした。

 同問題は、青木議員が議会の福祉教育委員会で国民健康保険料や生活保護の窓口への同行の是非を巡って、同議員を念頭に置いたと受け取れるような川田裕議長の発言に反論、抗議したことを発端としている。これが議長への「侮辱、名誉棄損」とみなされ、議会から陳謝や出席停止の処分を科されるに至った。

 しかし、議会は懲罰に当たり、青木議員が反発した川田議長の発言の内容「議員の国民健康保険料や生活保護の窓口への同行は禁止」「断っても帰らない場合は、理事者の義務として書面を残して議会に報告いただけるようにした」については、事実かどうかの検討をしなかった。

 「奈良の声」の検証では、「同行禁止」は3期前の議会の申し合わせである上、川田議長は現議会の任期開始後の議会運営委員会で「任期が替わっているので申し合わせは全部リセットになっている」と言明。また「議会への報告義務」についても「確か(そのように)した記憶がある」というあいまいな発言だったが、実際、そうした「義務」の存在を示す行政文書や議会の会議録は確認できなかった。 関連記事へ

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