議員の出席停止、高裁も「議会の処分は違法」 奈良県香芝市の控訴棄却
判決を受けて「勝訴」を喜ぶ青木恒子議員(中央)や弁護士、支援者=2024年8月28日、大阪市の大阪高裁前
訴訟機に生活保護申請時の議員同席拒否問題も浮上
奈良県香芝市議会から出席停止などの処分を受けた青木恒子議員(共産)が市を相手取り、国家賠償法に基づく損害賠償を求めた訴訟の控訴審の判決言い渡しが8月28日、大阪高裁であった。中垣内健治裁判長は、議会の処分を違法とした一審判決を維持、同判決の取り消しを求めた市の控訴を棄却した。
今年1月の一審の奈良地裁判決は、議会が違法な陳謝処分に対する陳謝拒否を理由に、より重い出席停止処分を科したことは裁量権を逸脱するなどとして違法とし、市に対し慰謝料など33万円の支払いを命じた。議会の意向を受けた市は判決を不服として控訴。一審と同様、陳謝の懲罰は議会の自治の考えから裁判所の司法審査の対象にならないなどと主張し、原判決の取り消しを求めていた。
青木議員の代理人弁護団はこの日、会見で発表した声明で、奈良地裁の原判決、控訴審の高裁判決について、議会での出席停止処分を司法審査の対象とするとした令和2(2020)年最高裁判決が、「陳謝拒否を理由とする出席停止処分」に対しても及んだものと評価。今後、議員は理不尽な陳謝処分には拒否で対抗し、議会に対し出席停止処分として司法審査に服するか、陳謝させることを断念するかの選択を迫ることが可能となったと述べた。宮尾耕二弁護士は「高裁でも完勝」とした。
青木議員に対する処分は、市議会福祉教育委員会で国民健康保険料や生活保護の窓口への市議会議員の同行を巡って、「禁止」と述べた川田裕議長に対し、同議員が「圧力と感じた」などと反論したことが発端となった。青木議員は、反論が議長への侮辱に当たるなどとされ、議会から5回にわたり陳謝の処分を受けたが、いずれも陳謝を拒否。2022年12月、陳謝拒否を理由に出席停止の処分を受けた。
青木議員は会見で「おかしいことはおかしいと言っていかなければいけないと思った。裁判の勝利は議会の民主化の第一歩」と述べた。
市「上告しない」
香芝市はこの日判決を受けて「上告しない」と発表した。三橋和史市長は「市議会における紛争について、市としてこれ以上の多大な行政資源を費やし、上告してまで訴訟を追行することは適切ではない。法的には司法権の限界について憲法判断を仰ぐ余地は残るが、市議会内の手続きに違法性があったことが明らかであり、重く受け止める必要がある。議員間の紛争については行政に持ち込むことなく、議員同士で解決してもらう必要があると考える」とのコメントを出した。
同訴訟を機に、香芝市が市民からの生活保護申請時の議員の同席を拒否してきたことが浮上。これに対し、今年6月に市長に就任した三橋市長は8月16日、従来の対応を改め、議員の同席を認めると発表している。