西奈良県民センター跡地の活用意向 県が再度、奈良市に照会 民間への売却方針は一時保留に
西奈良県民センター跡地。センター敷地のうち、運動場と児童公園(右)は公園として供用されており、このほどその境界に柵が設置された=2022年12月4日、奈良市登美ケ丘2丁目
売却方針が決定している県有地、西奈良県民センター跡地(奈良市登美ケ丘2丁目)について、県が再度、奈良市に対し、活用意向を照会していることが分かった。荒井正吾知事が12月7日の県議会12月定例会で明らかにした。跡地を巡っては、住民団体や地元自治会が民間への売却中止と公共利用を求めている。
県はこれまで跡地の売却に向けて手続きを進めてきた。跡地は県立大渕池公園の都市計画決定区域に含まれていたことから、建築制限のある同区域から除外するため、11月22日、都市計画の変更案を県都市計画審議会に諮り承認された。同月25日には同変更が告示され、除外が確定した。当初の方針通りなら、一般競争入札による売却へと手続きが進むが、一時保留される格好になった。
西奈良県民センター跡地に隣接する県立大渕池公園の池の眺め=2022年12月4日、奈良市登美ケ丘2丁目
同定例会で小林照代議員(共産)が代表質問で「西奈良県民センター跡地の処分方針の決定に当たっては、住民の意見を踏まえるべきと考えるがどうか」とただしたことに対し、知事が答えた。
県ファシリティマネジメント室によると、12月2日付文書で奈良市に伝えた。同室は再度、照会をしたことについて「先(最初)の意向確認から時間が経過しており、再度、活用意向を確認している」とした。回答期限は2023年3月末という。
これに対し、奈良市側の窓口となっている市都市政策課は「すでに(活用意向無しと)回答しているのに、なぜ再照会が来ているのか、(今は)文書が届いているだけで意図が分からない。県に確認中だが話はまだ聞けていない」という。
同課によると、県からの文書は、「県財産の交換、譲与、無償貸付等に関する条例」に言及して、地方公共団体には時価より低い価額で譲渡できるなどと記されているという。ただ、最初の照会ときと条件が変わっているのか文書からは分からないとした。
県から奈良市への最初の活用意向の確認は2020年7月。市は同年8月、「活用の意向無し」と回答。県はこれを受けて売却の方針を決めていた。
一方、住民でつくる「西奈良県民センター跡地利用を考える会」(川島信彦世話人代表)は、跡地の売却中止と共に防災を兼ねた公共施設の建設を求める3079人の署名を集め、2021年1月、知事に宛てて提出するなど、県、奈良市に対する要望活動を繰り返し行ってきた。
同会関係者の一人は県の対応について「一歩前進と評価したい。県には奈良市と責任をもって協議してもらえるように、また奈良市にはこれを受け止めてもらえるよう要望し、実のあるものにしていきたい」と話している。 関連記事へ