懲罰賛成議員への賠償金請求、否定せず 奈良県香芝市、議会の出席停止処分に損害賠償命じる判決で
奈良県香芝市役所=2024年6月、同市本町
奈良県香芝市議会の青木恒子議員(共産)に対する出席停止処分を違法とし、市に国家賠償法に基づく損害賠償を命じた控訴審判決が確定したことを受け、市は9月25日の市議会定例会(最終日)に、損害賠償金を支払うための一般会計補正予算案を提出。予算案は全会一致で可決されたが、三橋和史市長は、懲罰に賛成した議員に賠償金分を請求する求償権の行使について「求償することも含め、慎重に総合的な見地から検討したい」と述べて否定しなかった。
補正予算の追加額は34万9000円。懲罰に賛成した議員の一人でもある木下充啓議員(自民)が市に対し「個人的には上告して最高裁の判断を仰ぎたいという思いもあるが、奈良地裁、大阪高裁の判決を真摯(しんし)に受け止め、市に対して求償権を行使するよう求めたい」と述べたことに対する答弁。
三橋市長は、木下議員からの「市は求償権があるのか」と質問に対し、出席停止処分議案に賛成した議員にも過失があると認定した判決に言及しながら「懲罰に関与した議員に重大な過失があると考えられるので求償権を有することになる」との見解を示した。
その上で、求償権を行使した場合には「地方議会における議員の表決権の保障に対する影響」などの懸念もあるとし、逆に行使しなかった場合には「市が保有する権利の行使の懈怠(けたい)と評価される懸念がある」などと述べて「総合的な見地から検討してまいりたい」とした。
国家賠償法は、公務員の違法行為による損害賠償責任を国や地方公共団体に求めている。その一方で「公務員に故意または重大な過失があったときは、国または公共団体は、その公務員に対して求償権を有する」と定めている。
川田議長に対する議員辞職勧告決議案を可決
香芝市議会は9月25日の定例会本会議で、川田裕議長に対する議員辞職勧告決議案を賛成多数で可決した。同市議会は同月2日の定例会初日に、川田議長に議長職の辞職を求める不信任決議案を全会一致で可決したが、同議長は議長職にとどまっている。
この日は、真鍋亜樹議員(無所属)が本会議の冒頭、9月2日の不信任決議よりさらに重い議長職の辞職勧告決議案の動議を提起した。しかし、議会運営員会での審議で、同じ会期中に同一の案件を再び審議の対象にできないとする一時不再議に当たるとされ成立しなかった。
これを受けて青木恒子議員(共産)があらためて川田議長に対する議員辞職勧告決議案の動議を提起、賛成者があり動議は成立した。青木議員は同決議案の提案理由として、青木議員に対する議会の出席停止処分が裁判で違法とされたことについて議会の代表である川田議長の責任は重大などとした。また、議長であるにもかかわらず市公有財産有効活用検討会議の会長として、二元代表制に反して執行機関と一体となって小学校統廃合の方針を練り上げてきたなどとして責任を問うた。
弁明の機会を与えられた川田議長は「私の辞職勧告決議案は動議の乱用。正常な議会運営を成していない。(私は)何ら違法なことはしていない」などと主張した。
採決では、議長役の中谷一輝副議長と川田議長を除く議員14人のうち過半数の8人が賛成した。
本会議終了後、「奈良の声」の取材に応じた川田議長は決議について「重く受け止めている」とする一方で「数による暴力」とも述べた。決議に法的拘束力はなく、川田議長は「(市が構成団体となっている)一部事務組合の議会の特別委員会の委員長なども務めており、急に仕事を投げ出すことはできない」とした。