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浅野善一

市が負った賠償金、議会へ求償「妥当」 奈良県香芝市、議員の出席停止「違法」判決で

奈良県香芝市役所=2024年6月26日、同市本町、浅野善一撮影

奈良県香芝市役所=2024年6月、同市本町、浅野善一撮影

「誰に求償すべきか」で全議員にアンケート

 奈良県香芝市は、市議会による議員の出席停止の懲罰が昨年8月の大阪高裁判決で違法とされ、裁判上の被告として市が負った損害賠償金について、懲罰に賛成した議員に求償すべきかどうか検討していたが、求償するのが「妥当」との結論を出した。昨年12月の市議会定例会で明らかにした。市はこれに先立って全議員を対象にアンケートを実施しており、その結果などを参考に誰にいくら請求すべきか検討している。

 三橋市長は12月2日の同定例会本会議で、裁判の原告だった青木恒子議員(共産)に損害賠償金34万7935円を支払ったことを説明した上で「複数の議員からの指摘も踏まえて検討を進め、関係者に損害賠償金の相当額を求償していくことが妥当との結論に達した。いずれの方にいくらの金額をお支払いいただくべきかは、なおも検討中」と述べた。

 アンケートは昨年11月下旬、全議員16人を対象に実施された。市文書法制課によると、誰に求償すべきか具体的に名前を挙げてもらうなどしたという。何人の議員から回答があったかや回答の内容については「差し控えたい」とした。「奈良の声」の取材に対し、同課長は「アンケート結果は一つの参考。求償の対象者を誰にするのか、あらゆる方法で調査している」と述べた。

 同問題は昨年9月の市議会定例会で浮上した。市が損害賠償金を支払うため提出した一般会計補正予算案の質疑で、懲罰に賛成した議員の一人が「判決を真摯(しんし)に受け止める」として自ら求償権の行使を求めた。三橋市長は「出席停止処分の議案に賛成した議員のみならず、表決に加わらずとも議案に賛成するよう(働きかけるなど)関与した議員の有無についても、調査すべきではないかとの見解もある。慎重に総合的な見地から検討し、関係者に求償することも含め対応してまいりたい」と答弁していた。

 裁判は、市議会から出席停止などの処分を受けた青木議員が市を相手取り、国家賠償法に基づく損害賠償を求めたもので、大阪高裁は、議会の処分を違法とした一審判決を維持、同判決の取り消しを求めた市の控訴を棄却した。市は上告しなかった。

 懲罰の発端は、青木議員が議会常任委員会で国民健康保険料や生活保護の窓口への同行の是非を巡って、当時議長だった川田裕議員(無所属)に反論したこと。議会から5回にわたり陳謝の処分を受けたが、いずれも陳謝を拒否。2022年12月、陳謝拒否を理由に出席停止の処分を受けた。

 国家賠償法は、公務員の違法行為による損害賠償責任を国や地方公共団体に求めている。その一方で「公務員に故意または重大な過失があったときは、国または公共団体は、その公務員に対して求償権を有する」と定めている。地方公共団体の議員は特別職の地方公務員。

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